2000 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ環境保全行政における「経済的配慮」の法的コントロール
Project/Area Number |
12720013
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山田 健吾 香川大学, 法学部, 講師 (10314907)
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Keywords | 経済的配慮 / 公共性 / 環境規制 / 経済的手法 / 環境リスク |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ環境保全行政における経済的手法や、環境リスク分析などを素材として、そこでの環境規制の公共性を実現するために、いかなる「経済的配慮」を区割ることが求められているのかを分析をすることを目的としている。本年度は、そのために、アメリカにおける行政改革に関する法律および判例等、ならびにこれにかかわる論文等を収集し、また、アメリカおよび我が国の研究者へのインタビューなどを含めた調査を行ってきた。それによって得られた新たな知見等は以下の通りである。 すなわち、第一に、アメリカでは、第104議会において規制における「経済的配慮」が最大の焦点であったのであるが、現在でも、経済的手法や環境リスク等の採用を通じての、被規制者や規制者の費用負担の削減や、費用効果的な規制のあり方が重要な論点である。第二に、American TruckingAss'n v.EPA,175 F.3d1027(D.C.Cir.1999)は、委任禁止の法理との関わりで注目を集めた判決であるが、これは、環境基準の策定過程において考慮すべき費用についての解釈論を展開したことでも注目され、「経済的配慮」の考察にとって重要な判決として位置づけられている。第三に、現在、我が国と同様にアメリカにおいても、環境規制のみならず規制一般において、「公」と「私」との役割分担が一つの重要な論点となり、これによって、アメリカ行政法における諸原理がいかなる変容を被る可能性があるかが議論されている。このような議論においても、効率性や、費用負担などを含めた「経済的配慮」のあり方が「公」と「私」との役割分担を考える際の、一つのメルクマールとなりつつある。第四に、したがって、ここから、環境規制における「経済的配慮」の考察にあたっては、環境保全にとってそれが有する固有の意義と限界の分析とともに、規制の公私の役割分担という観点からの検討の必要性が提起されてくる。
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