2001 Fiscal Year Annual Research Report
憲法と国際人権法の相互関係における「共生」性の萌芽
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12720017
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Research Institution | Women's College, Meiji University |
Principal Investigator |
江島 晶子 明治大学短期大学, 助教授 (40248985)
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Keywords | ヨーロッパ人権条約 / 1998年イギリス人権法 / 国際人権法 / 憲法 / 共生 / 人権保障 / 人権教育・訓練 / 条約の国内的実施 |
Research Abstract |
本研究は、憲法と国際人権法の「共生」関係を描出するために、両者が相互に影響を及ぼし合いながら継続的に発展する「過程」を究明する。そのために、(1)ヨーロッパ人権条約(以下、ECHR)を国内法化するために制定された1998年イギリス人権法(以下、人権法)が2000年10月に発効するまでの準備過程および(2)発効後の実施過程が主たる検討対象である。平成13年度は、前年度の研究によって調査したECHR国内法化実施準備措置を、発効後の状況の検証によって実効性を評価することを主眼とした。 具体的には、行政機関及び司法機関における実効措置の実効性および立法機関への影響である。第一に、行政機関では、各省庁における実施準備には各省庁の性格や業務内容によって力の入れ具合には強弱があるものの、とりわけ人権法が重要な影響を及ぼすことが想定された部門、とくに移民、警察、検察、教育関係においては、実効的な取組があったと評価できる。それは、個別具体的な想定事例集の作成や省内での教育・訓練や啓発セミナーの開催に表れている。第二、司法機関では、人権法に関する事件件数は、比較的穏当な数字で推移(微増)しており、実施前2年にわたる裁判官に対する教育・訓練は一定の成果を収めたと評価できる。しかし、現代社会の変化と多様性を反映した新しい事件は、人権法およびECRHとの関連性のもとに提起されており、今後も人権法を介してECHRが重要な影響を及ぼし続けることは必須である。EHCR側の発展を考慮に入れると興味深い点であり、ECHRおよび人権法の影響は、今後、長期的視点から検証を続けていく予定てある。他方、立法機関に関しては、議会合同人権委員会の今後の動向を検討する必要がある。憲法と国際人権法の「共生」関係という観点からは、イギリス政府がECHR国内法化のために実務レベルで念入りな実施準備を実現した点に注目すべきであり、こうした国内的・具体的な対応こそが、「共生」関係の実現に重要な役割を果す。よって、日本においても参考にすべき点である。
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[Publications] 江島晶子: "人権保障におけるBills of Rightsの意義と役割-A Bill of Rightsとしての日本国憲法を評価する試みとして-"憲法理論研究会編『立憲主義とデモクラシー』(憲法理論叢書). 9号. 45-58 (2001)
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[Publications] 江島晶子: "一九九八年イギリス人権法の実施過程に関する検討-「人権の世紀」にするためのAlternative-"法学新報(中央大学). 108・3. 551-575 (2001)