2001 Fiscal Year Annual Research Report
民事司法制度改革における裁判外粉争処理方法(ADR)と提訴権制限に関する比較法的検討
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12720028
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
安達 栄司 静岡大学, 人文学部, 助教授 (50273157)
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Keywords | 裁判外紛争処理方法 / 民事司法改革 / ドイツ民事手続法改正 / 手続基本法 / ADR / 不服申立 / 合意の瑕疵 / 消滅時効の中断 |
Research Abstract |
本年度の重点は、ADRの利用を実効的にするための強制的装置として、提訴権及び上訴権の制限についてドイツ法との比較検討をすること、ドイツ民訴法の改正論議を追って、わが国の法改正や制度改革への示唆を得ることにあった。現時点で以下のような成果が得られた。 1.わが国ではADRの国家法制度への組み入れは、ADR基本法という構想に結実している。そこでは個々の手続的規整が提案されているが、より重要なのは従来からの手続法上の基本原則がどこまでADRで実現可能か(すべきか)という問題である。この点について、手続法ドグマを直接の対象とする近時の研究(Eidenmueller, Stuerner, Hager)を手がかりにして研究することができた。 2.ADRの実効性を担保し、またその利用を強制できる鍵の一つが、ADRによる消滅時効の中断の可能性である。この問題は、従来ADR基本法の枠内で言及されることが多かった。しかし、わが国の法体系において時効法は実体法(民法)に属する問題である。この点で、ドイツにおいて民法(債務法)の大改正の中で、ADRによる消滅時効の中断を認める明文規定が新設されたことが注目され、新しい時効法体系にも関連させて研究することができた。 3.ADR活性化の目的の一つは国家司法の負担軽減である。その際の理想はADRによって紛争が終局的に解決されることである。そのためには紛争解決内容の正当性が問題になるが、ADRの場合には、(手続利用または手続結果についての)当事者の合意が正当化根拠である。しかし、当事者の合意に瑕疵が含まれる場合には後から、またはADRの利用を重くしないために初めから、ADRの結果に対する不服申立を認める必要もでてくる。この点で、不服申立制度の大改正を実現したドイツの新民事訴訟法・仲裁法をめぐる議論から示唆を得ることができた。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] 安達栄司: "コスタス・ベイス:権利能力および当事者能力の新しい確定方法"比較法学(早稲田大学比較法研究所). 34巻2号. 208-223 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "紹介:山本和彦「裁判外紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化に向けて」他(仲裁文献紹介88)"JCAジャーナル(国際商事仲裁協会). 525号. 46-47 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "いわゆる具体的相続分(民法903条1項)の確認を求める訴えの適否"NBL(商事法務研究会). 714号. 72-75 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "紹介:「猪股孝史UNCITRAL調停モデル法草案についての検討」他(仲裁文献紹介92)"JCAジャーナル(国際商事仲裁協会). 529号. 60-61 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "詐害行為取消権に基づいて債務者・受益者間の債権譲渡契約の取消等を求めた訴えの係属中に受益者が右債権譲渡を撤回した場合に、右撤回が債権譲渡の取消権を被保全債権、受益者を相手方とした処分禁止の仮処分に反し、債権者との間で無効とされた事例"判例評論(判例時報). 510号. 204-207 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "ドイツにおける州土壌検討委員会モデル州法草案"平成12年度世界各国の環境法制に係る邦訳等比較法調査報告書(土壌保全)環境省委託研究). 1-10 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "破産者を免責する決定に対する即時抗告期間"NBL(商事法務研究会). 719号. 71-75 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "少額訴訟手続における控訴制限の合憲性"NBL(商事法務研究会). 722号. 80-83 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "紹介:"Joerg Riese, Undurchfuehbarkeit der Schiedsvereinbarung bei Mittellosigikeit des Klaegers"他 (仲裁文献紹介96)"JCAジャーナル(国際商事仲裁協会). 533号. 60-61 (2001)
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[Publications] 安達栄司 (Eiji Adachi): "Die Regelung der japanischen internationalen Zustaendigkeit zwischen Deutschland und den USA"Dike International 2001. 2001. 1161-1170 (2001)
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[Publications] 安達栄司: "米国クラス・アクションによる裁判上の和解・判決の承認について"民事訴訟雑誌(日本民事訴訟法学会). 48号. 201-206 (2002)
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[Publications] 安達栄司: "紹介:Otto Sandrock, "Gewoehnliche Fehler in Schiedsspruechen : Wann koennen sie zur Aufhebung des Schiedsspruchs fuehren?" 他 (仲裁文献紹介100)"JCAジャーナル(国際商事仲裁協会). 537号. 61-62 (2002)
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[Publications] 安達栄司: "不法行為地に基づく国際裁判管轄の審査方法"NBL(商事法務研究会). 733号(予定). 60-67 (2002)
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[Publications] 石川明先生古稀記念論文集編集委員会編 安達栄司分担執筆: "石川明先生古稀記念論文集(「わが国における米国クラス・アクション上の和解の承認適格」を執筆)"商事法務研究会(刊行予定). (2002)
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[Publications] 小林秀之=園尾隆司編, 安達栄司分担執筆: "条解民事再生法(207条から210条の注釈を分担執筆)"弘文堂(刊行予定). (2002)