2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12720029
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川地 宏行 三重大学, 人文学部, 助教授 (90262831)
|
Keywords | 適合性原則 / 説明義務 / 助言義務 / 顧客情報収集義務 / 証券取引 / 先物取引 / デリバティプ取引 / 金融商品販売法 |
Research Abstract |
不当勧誘を行った金融商品販売業者(銀行・証券会社・保険会社など)の損害賠償責任について分析を試みた。特に、顧客の知識、経験、投資目的、財産状態などに適合した金融商品の勧誘を業者に要請する「適合性原則」についてアメリカ法とドイツ法との比較を行い、以下の成果を得た。1.説明義務との関係。説明義務は重要な事実を告知する義務であるが、適合性原則は特定の金融商品が顧客に適合するか否かを評価する義務である。アメリカでは「合理的根拠に基づく適合性判断義務」、ドイツでは「投資家に適した助言義務」が業者に課せられている。説明義務は情報収集力の格差を、適合性原則は情報分析力の格差をそれぞれ是正し、ともに自己責任原則の前提を確保するための制度であるが、義務の内容が異なる。2.顧客情報収集義務との関係。適合性判断は合理的根拠に基づくことを要する。そのために、顧客情報収集義務を業者に課すことが不可欠である。3.損害賠償責任の要件と効果。ドイツでは助言義務違反に基づく損害賠償責任が幅広く認められている。アメリカでは、「口座支配(業者の助言に顧客が無批判に追随する状態)」「適合性に関する不実告知あるいは不開示」「詐欺の故意」などの加重要件が課されているため、賠償責任の認定に消極的であるが、チャーニング(過当取引)の法理などによって賠償責任を肯定しているので弊害は少ない。わが国の判例も「明らかに不適合な勧誘」という加重要件を課し、賠償責任の認定に消極的であるが、アメリカとは異なり、他の違法性判断基準が未成熟であるため、被害者の保護に欠ける。4.金融商品販売法との関係。金融商品販売法は適合性原則について業者に勧誘方針の策定と公表を義務付けるに止まったが、取締規定違反による損害賠償責任を定めたドイツ民法823条2項のような規定を持たないわが国の法状況において、適合性原則の遵守と損害賠償責任の明文化が必要である。
|
Research Products
(1 results)