2000 Fiscal Year Annual Research Report
小売業における過小過多構造の成立-開業構造に着目して-
Project/Area Number |
12730068
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
川野 訓志 横浜市立大学, 付置研究所(経済研究所), 助教授 (20244460)
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Keywords | 小売商 / 過小過多 / 開業 / 昭和初期 |
Research Abstract |
昭和初期の小売商問題の背景にあった過小過多構造がいかなる要因で成立したのかを検討するにあたり、小売業界に多くの人々が参入して新規に開業するのがその主要因と想定し、その参入状況を解明することが本研究の目的である。 本年度当初にあたる5月19日の商業学会全国大会で「小売業における過小過多構造の一側面-開業パターンに着目して-」を報告した。本報告では、既に入手済みであった東京市新市域における開業調査等に基づき、作業仮説として開業に要する技術・熟練と開業資金とを組み合わせる形で、4つの開業パターンを提示した。本年度の作業は、この開業パターンの違いを意識しながら、歴史研究に必須な資料探索に専念することとし、資料収集が不十分な段階でのより詳細な仮説提示は敢えて抑制することとした。これが本年度、本研究に関連する論文がない理由である。 従って本年度の成果は、資料収集及びそれより得られたアイデアに限られるが、福島大学、東北大学、神戸大学、京都大学における資料調査によっていくつかの面で著しい成果が得られた。 特に東北地方における商業関係の統計資料が手に入ったことにより、当時余剰労働力を都市部に供給していた地方における商業構造が分析できるようになったことは、大きな成果である。工業化に伴う都市成長を引き起こした全国規模での人口移動が、大都市における小売業者増加に大きな役割を果たしたものと考えられるからであり、大都市で開業せざるを得なかった人々がどういう背景を持っているかが分析可能となった。また、大阪・京都を中心とした店員問題に関する資料も入手できたが、これは高熟練、多額の資金を要する小売業種を分析する際に役立つものと考えている。
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