2000 Fiscal Year Annual Research Report
金属結晶成長の数理モデルに現れる螺旋状進行波解の漸近解析的研究
Project/Area Number |
12740058
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
中村 健一 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (40293120)
|
Keywords | 螺旋状進行波解 / 界面方程式 / アルキメデス螺旋 / 順序保存力学系 |
Research Abstract |
ファセットと呼ばれる平らな結晶表面のらせん転位による成長を記述する数理モデルとして提案された,反応拡散方程式およびその特異極限として導出される界面方程式の解の定性的性質を,漸近解析的手法,数値シミュレーション,および,順序保存力学系の一般論を用いて理論的に解析した。 1.モデル方程式である,空間的に一様でない非線形項をもつ2次元円環領域上の反応拡散方程式に,一定速度で回転しながら一定速度で成長する解(螺旋状進行波解)が存在することは数値的には確認されていたが,群が作用する順序保存力学系の一般論を用いて厳密にその存在を証明することができた。また,螺旋状進行波解が時間シフトを除いて一意的であること(したがって,回転・成長速度も一意),時間に関して単調増加関数であること,および,大域的に漸近安定であることも示した。 2.螺旋状進行波解に関して,一般論の適用だけでは形状(プロファイル)はわかりにくいので,モデル方程式に含まれる微小パラメータを形式的に0にすることで得られる界面方程式(曲線の発展方程式)の解の幾何学的性質を調べた。この方程式は本質的には常微分方程式の非線形固有値問題とみなすことができるが,爆発する(有限区間で解が無限大になる)解も存在するので取り扱いが難しい問題である。この問題に関し,区間の両端からの精密なシューティングを行うことにより,界面方程式が一定速度で回転する曲線を解にもつこと,また,円環領域の内径を0に外径を無限大に近づけると解の形ははそれぞれあるアルキメデス螺旋に漸近することを示した。
|