2000 Fiscal Year Annual Research Report
可搬型サブミリ波望遠鏡を用いた中性炭素原子輝線の銀河系中心領域サーベイ
Project/Area Number |
12740119
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 朋治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10291056)
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Keywords | 銀河系中心 / 星間物質 / 中性炭素原子 / サブミリ波望遠鏡 / 超伝導素子 |
Research Abstract |
わたくしは1995年より、小型で可搬型のサブミリ波望遠鏡を開発している。この望遠鏡は、中性炭素原子が放射する二本のサブミリ波スペクトル線(CI^3P_1-^3P_0:492GHz,^3P_2-^3P_1:809GHz)による広域サーベイ観測を行うことによって、銀河系スケールにおける原子ガスの分布・運動・物理状態を調べることを目的としている。この望遠鏡の特長は、可搬型のため世界中のあらゆる優良観測サイトに持ち込むことが出来、しかも主鏡口径が18cmと小さい(HPBW=13′【upper filled triangle】2GHz)ので広い領域をサーベイするのに適しているところにある。 本研究課題の目的は、この可搬型18cmサブミリ波望遠鏡、特に受信機フロントエンド部分の大幅な改良によりその受信感度の飛躍的な向上を図り、中性炭素原子のサブミリ波スペクトル線による銀河系中心領域全体の観測を世界で初めて実現しすることにある。今年度は本研究課題の初年度にあたり、実験装置の設計・開発およびその性能評価が主な活動内容であった。 ■超伝導ミキサ受信機の設計・製作 新型の超伝導(SIS)ミキサを使用した、492GHzと809GHzの二つの周波数の観測が(切り替え式で)可能な受信機フロントエンドを設計・製作した。超伝導ミキサ素子は、超伝導体としてNbを使用したジョセフソン接合から成り、その転移温度は9.23Kである。これをミキサとして動作させる為には、素子を4K程度まで冷却する必要がある。従ってまず、この超伝導ミキサ素子をマウントするミキサ・ブロック、および天体からの信号と局部発信器からの信号をミキサに導く光学系を設計・製作し、同時にそれら全てをマウントするクライオスタットの製作を行った。実験室における492GHz帯受信機の望遠鏡に搭載した状態での総合性能は、T_<sys>=203Kであった。 ■音響光学型分光計および高速データ積分器の設計・製作 受信機バックエンドとして、新たに900MHzの帯域を持つ小型音響光学型分光計(AOS)とOn-the-flyマッピング観測法に対応した高速積分機を開発した。 ■観測制御システムの構築 制御用計算機を新システムに移行した。制御系にはGPIBインターフェースを採用し、Visual C++言語により全ての制御ソフトウェアシステムを新たに構築した。 本望遠鏡は平成13年2月、南米チリのアタカマ砂漠パンパラボラ(標高4800m、LMSA建設予定地)に移設され、銀河系中心領域および銀河面の中性炭素原子サブミリ波輝線広域サーベイ観測が開始される予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Pierce,Plice D.,Richer J.S.,Greaves J,S.,Holland,W.S.,Jenness,T.,Lasenby,A.N.,White,G.J.,Matthews,H.E.,Ward-Thompson.D.,Dent.W.R.F.,Zylka,R.,Mezger,P.,Hasegawa,T.,Oka,T.,Omont,A.,Gilmore,G.: "A Deep Submillimeter Survey of the Galactic Center"The Astrophysical Journal. 545. L121-L125 (2000)
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[Publications] Durouchoux,Ph.,Sood,R.,Oka,T.,Seers,M.,Safi-Harb,S.,Vilbu,O.,Huovelin,J.,Thresber,D.,Corbel,S.,O'Neill,P.: "Jet Interaction of SS 433 with the Ambient Medium"Advances in Space Research. 25. 703-708 (2000)
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[Publications] 関本裕太郎,山本智,岡朋治,立松健一: "富士山頂サブミリ波望遠とその初期成果"天文月報. 93. 257-265 (2000)
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[Publications] 岡朋治: "LMSA/ALMAで明らかになる銀河系中心の姿"天文月報. 93. 691-691 (2000)