2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12740195
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小椎八重 航 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20273253)
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Keywords | Heikesの公式 / コバルト酸化物 / 熱起電力 / 強相関電子系 / 軌道自由度 |
Research Abstract |
本研究では,早稲田大の寺崎らにより発見された,コバルト酸化物における巨大な熱起電力の報告を出発点として,強相関電子系における熱起電力と電子のスピンおよび軌道自由度との関係を理論的な立場から研究し,コバルト酸化物の巨大熱起電力の起源を調べた. 高温での熱起電力を与える式はHeikesの公式として知られている.これまでの研究によると,強相関電子系で熱起電力は単調な温度依存性を示し,Heikesの公式が与える値は,その電子系が示し得る熱起電力の上限を示す.そこで我々は,遷移金属酸化物に代表される強相関電子系へのHeikesの公式の一般化を通して,コバルト酸化物の大きな熱起電力の起源解明に迫った.その結果,強相関電子系においては,キャリアーの運動に伴い運ばれる,電子のスピンおよび軌道縮退が熱起電力の増大につながることを明らかにした.コバルト酸化物において伝導を担うのは,Co^<3+>とCo^<4+>である.これらは,低スピン,中間スピンそして高スピン状態といった特徴的な電子状態を示し,それに伴う固有の縮退をもつ.Co^<3+>とCo^<4+>がその場所を入れ換えると,電荷と共にそれぞれの縮退も置き換わる.電荷は単位電荷分しか移動しないが,縮退の移動分はCo^<3+>とCo^<4+>の縮退度の兼ね合いで決まる.この縮退の移動分の大小は,そのまま,熱起電力に反映される.NaCo_2O_4におけるコバルトイオンの形式価数が+3.5であることから,Co^<3+>とCo^<4+>の濃度を50%ずつとして,熱起電力を計算した.Co^<3+>の状態として最も縮退度が小さな低スピン状態を仮定し,Co^<4+>の縮退度を大きくしていくと,正の値を持つ大きな熱起電力が得られた.Co^<3+>の縮退度を大きくしていくと,熱起電力は小さくなり,さらには負の値を示すようになる.帯磁率やNMRの実験によるとCo^<3+>は低スピン状態に,Co^<4+>は低スピンもしくは他のスピン状態あることが示唆されており,NaCo_2O_4における大きな熱起電力,さらにはコバルト酸化物の電子状態が,我々の理論により矛盾無く説明された.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.Tsutsui,W.Koshibae,and S.Maekawa: "Electronic structure and excitation spectra in doped nickelates"Physica B. 284-288. 1471-1472 (2000)
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[Publications] W.Koshibae,K.Tsutsui,and S.Maekawa: "Thermopower in cobalt oxides"Physical Review B. 62. 6869-6872 (2000)