2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12740225
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
島 弘幸 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40312392)
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Keywords | 量子ホール効果 / ランダム磁場 / 2次元電子系 / 局在非局在転移 |
Research Abstract |
空間的にランダムな磁場を印加した2次元電子系は、高温超伝導体におけるフラックス相、分数量子ホール状態における複合粒子描像での準粒子などと密接な関係があるため、様々な理論的・数値的アプローチによって精力的に研究されている。しかし、この系の電子輸送について過去に行われた研究の多くは、磁場の空間分布に相関がない場合を対象としている。一方、実際に実現される磁場の分布は空間的に滑らかであるから、実験事実を数値計算から説明するには長距離相関を有するランダム磁場系を扱う必要がある。そのような系における交流電気伝導度σ(ω)の振動数依存性について、近年、準古典近似を用いた理論解析がEvers et al.(1999)により行われた。彼らは、磁場の相関距離が電子のフェルミ波長より十分大きい場合には電子間の干渉効果が無視できるという仮定を基に、零平均ランダム磁場系の交流伝導度が通常のDrude型とは異なる特異な振動数依存性をもつことを示した。しかし量子干渉効果が無視できるという彼らの仮定には明確な根拠がない。さらに、電子の固有状態の空間的分布はフェルミエネルギーE_Fの値に強く依存するはずであるが、上の理論ではこの点を全く考慮していない。よってこの系の交流伝導度σ(ω)を正確に評価するには、完全に量子力学的にσ(ω)を計算し、量子干渉効果の寄与を明らかにする必要がある。 本研究では長距離相関を有する2次元ランダム磁場系の交流伝導度σ(ω)を数値的に調べた。実際の計算には、強制振動子法およびChebyshev多項式展開を利用した独自のアルゴリズムを適用した。計算の結果、σ(ω)はクロスオーバー振動数ω_cを境にω≪ω_cではωとともに増加し、ω≫ω_cではσ(ω)=σ(0)-c・ωに従って減少した(cは定数)。また、このクロスオーバー振動数ω_cはE_Fにおける固有状態の局在長で特徴づけられることがわかった。さらに、量子ホール系の臨界点近傍におけるσ(ω)の振る舞いとの対比から、ω≫ω_cにおけるσ(ω)の線形減少は速度-速度相関関数の長時間べき〈υ(t)υ(0)〉∝t^<-2>を反映したものであることを明らかにした。これらの計算結果は準古典近似では説明がつかない。すなわち、2次元ランダム磁場系における交流伝導度の振動数依存性には、量子干渉効果が重要な役割を果たしていることが我々の研究で初めて明らかとなった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hiroyuki Shima: "Dynamic Conductivity in a 2D Random Magnetic Field"Physica B. (in press). (2001)
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[Publications] Hiroyuki Shima: "Low-frequency behavior of 2D electrons in a long-range random magnetic field"Proceedings of 25th Int'l Conf.Phys.Semicond.. (in press). (2001)
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[Publications] Hiroyuki Shima: "Quantum transport in long-range random magnetic fields"Computational Physics Communication. (in press). (2001)
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[Publications] Hiroyuki Shima: "The forced Oscillator Method"Computational Physics Communication. (in press). (2001)