2000 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における金属絶縁体転移近傍での軌道自由度の影響
Project/Area Number |
12740240
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
武藤 哲也 理化学研究所, 磁性研究室, 基礎科学特別研究員 (50312244)
|
Keywords | 重い電子系 / 近藤絶縁体 / 周期的Andersonモデル / 局所近似 / 自己無撞着二次摂動理論 |
Research Abstract |
研究の第一段階として、複数のバンドを持つ強相関電子系の理論的なモデルにおける金属絶縁体転移近傍の電子状態を調べることを目的とした。特に、重い電子系を念頭に置き、周期的Andersonモデルを用いて研究を行った。周期的Andersonモデルで記述される系において、最も単純な機構によって現れる絶縁相は、f電子と伝導電子との混成に起因するギャップを持つ混成ギャップ絶縁相である。これは、近藤絶縁体(半導体)と呼ばれる重い電子系物質群の理論モデルとなり得る。本年度は、この混成ギャップ絶縁体に対してキャリアドープを行うことによって生じる金属状態の研究を行った。 周期的Andersonモデルの混成ギャップ絶縁相と同等の状態は、格子点当たりの伝導電子数が1となる場合の近藤格子モデルでも記述される。しかし、たとえば、一次元の近藤格子モデルで記述される絶縁相は、fスピンと伝導電子スピンの局所的な一重項状態であると考えられており、キャリアドープした場合の金属状態では、一重項から三重項へのスピン励起エネルギーとは別の新たなエネルギースケールが現れることが指摘されていた。 本研究では、周期的Andersonモデルで記述される混成ギャップ絶縁相にキャリアドープした場合に現れる金属状態において、特徴的なエネルギースケールがどのように表されるかを調べた。具体的には、自己エネルギーの波数依存性を無視する近似(局所近似)の下で、f電子間Coulomb相互作用に関する自己無撞着二次摂動理論により、Green関数を決定し、一電子状態密度、磁化率、電荷感受率などを計算して、それらの温度変化、及び、電子数密度依存性を求めた。その結果、キャリアドープにより、一見、新たに現れたように見えたエネルギースケールが、実は、混成ギャップと同様に繰り込まれていくことがわかり、系の特徴的エネルギースケールは一つであることが確認された。
|