2000 Fiscal Year Annual Research Report
太陽風起源揮発性元素同位体組成の探求-2次イオン質量分析計を用いた月試料分析
Project/Area Number |
12740305
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋爪 光 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90252577)
|
Keywords | 二次イオン質量分析計 / 窒素 / 水素 / 同位体 / 太陽風 / 月試料 |
Research Abstract |
月試料に捕獲された軽元素(窒素、炭素、水素)同位体の研究を行った。今年度は、2次イオン質量分析計(SIMS)により前年度に得たデータを解釈し、これら軽元素の起源に関する考察を重点的に行った。また、さらに精度の高い分析技術を確立するために標準ガラス試料の作成、および、それを用いたSIMS軽元素分析を行った。 (SIMSデータの考察)月表土試料は火成作用を経ているにもかかわらず水素・窒素・炭素・希ガスなどの揮発性元素が大量に含まれている。その主な起源は太陽風、あるいは、月に落下した微小隕石・隕石や彗星等の惑星物質などが候補として考えられ、軽元素同位体比からこれらを区別する試みを進めた。考察の結果、質量数15の窒素が地球大気と比較して24%以上欠乏している窒素成分がいくつかの月粒子表面約百ナノメートルの層中に見られ、それが明らかに太陽起源だと判断できる重水素をほとんど含まない水素と相関していることがわかり、太陽風起源窒素同位体比組成を世界ではじめて確定させることに成功した。この結論から、太陽の窒素同位体比は隕石や地球等惑星の持つそれとは大きく異なり、固体惑星物質は必ずしも太陽と同じ同位体比(つまり起源)を持つ物質から作られたのではないことが示唆された。この結果は2000年11月のサイエンス誌に発表された。 (SIMS分析技術)窒素、炭素、水素を豊富にしかも均質に含む天然試料はほとんど存在しないので高圧技術を用い珪酸塩試料中に大量の軽元素を溶解させた人工ガラス・金属試料を作成した。この試料を東京大学に備わるSIMSで分析し、試料中のこれら元素の分布や同位体再現性、及び、感度についての試験を重ねた。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Hashizume K. et al.: "Solar Wind Record on the Moon : Deciphering Presolar from Planetary Nitrogen"Science. 290. 1142-1145 (2000)
-
[Publications] Pinti D.L.and Hashizume K.: "^<15>N-depleted nitrogen in Early Archean kerogens : clues on ancient marine chemosynthetic-based ecosystems?"Precambrian Research. 105. 85-88 (2001)
-
[Publications] Hashizume K.and Marty B.: "Nitrogen isotopic analyses at the sub-picomole level using an ultra-low blank laser extraction technique"In "Handbook of stable isotope analytical techniques". (受理済み). (2001)
-
[Publications] Pinti D.L.and Hashizume K.: "The nitrogen and argon elemental and isotopic signature in>3.5 Ga metasediments : clues on the chemical state of the Archean ocean and hte deep biosphere."Geochimica Cosmochimica Acta. (受理済み). (2001)