2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムタンパク質に結合した一酸化炭素分子の振動エネルギー緩和の動力学
Project/Area Number |
12740307
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
信定 克幸 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50290896)
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Keywords | ヘムタンパク質 / 振動エネルギー緩和 / 電子状態計算 / 反応動力学 |
Research Abstract |
対象とする系を一酸化炭素が結合した鉄-ポルフィリン(ヘム)部分と周りのタンパク質部分に分け、ヘム部分の電子状態計算を行った。先ず、一酸化炭素がヘムに配位した六配位型と、配位していない五配位型の鉄ポルフィリン錯体の最安定最適化構造を、非経験的量子化学計算に基づいて計算した。その際、特に、鉄原子の3d、4s電子の電子相関を出来る限り正確に取り込むことに重点を置いた。これは、本研究の主要課題の振動エネルギー緩和の動力学を最も左右する因子と考えられるからである。続いて、一酸化炭素とポルフィリン環中央に位置する鉄原子との距離、イミダゾール環と鉄原子との距離の関数として相相互作用ポテンシャル計算を行った。この相互作用ポテンシャルから以下のような結果が見出せた。一酸化炭素と鉄原子の結合には比較的深いポテンシャルの井戸があるが、ヒスチジン側鎖のイミダゾール環と鉄原子の結合は非常に弱く、この距離の変化に対するポテンシャルの変化は非常に緩やかである。一般的に、ヘム部分はタンパク質に緩く結合している(つまり、ヘム部分はタンパク質部分から比較的独立している)と考えられているが、今回の計算結果も、この事実を支持していた。また、一酸化炭素は分子軸をポルフィリン環平面に対して垂直方向に向けてヘムに強く結合しているが、一酸化炭素を鉄原子から離していくにつれて、分子軸がポルフィリン環平面に対して平行な方向に大きく傾くことが分かった。現在この詳細な解析を行っているが、一酸化炭素とポルフィリン環を構成している窒素原子との電子的な相互作用が関係していると考えられる。
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