2000 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属を含む多重項活性種(ラジカル/クラスター)の物理化学的性質の研究
Project/Area Number |
12740316
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡林 利明 静岡大学, 理学部, 助教授 (70224045)
|
Keywords | 遷移金属 / 多重項活性種 / ラジカル / クラスター / マイクロ波分光 / スパッタリング |
Research Abstract |
本研究の目的は、不揮発性の遷移金属原子を含む多重項活性種(ラジカル・クラスター)の物理化学的性質(構造、結合性、電子分布等)の究明である。本年度は第4周期の遷移金属(Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn)を含む活性種についての研究を行った。本年度中にはまだクラスターの検出には至っていないが、小さなラジカルについてはさらに研究を進める事ができた。 遷移金属を含む多重項活性種生成の生成法としてために、次の3種の生成法の開発を行った。 1、電極からの金属原子のスパッタリング:この方法により、さきに報告したFeCl、CrCl、CrFラジカルなどのの生成に加え、さらに今回NiClのマイクロ波スペクトルをはじめて検出した。Niは宇宙存在量の高い元素であるので、宇宙の化学進化における遷移金属化合物の役割の解明のための基礎データとして役立つ事が期待される。また、CuFとAgFを既報の方法よりも遥かに効率的に生成させることに成功した。これらの分子は最も単純な遷移金属化合物として、分子軌道計算の精度の確認によく使われており、本研究で改善した分光学的定数が今後の計算精度の向上に寄与すると考えられる。以上のようにスパッタリング法をマイクロ波分光法と組み合わせて使う手法を、さらに推し進める事ができた。 2、揮発性金属化合物の利用:これまでさほど有効でないと考えられていたこの方法を用いて、FeCラジカルを生成させることに成功した。この方法はスパッタリング反応では生成が比較的難しい炭化物を、効率的に生成させる方法として今後さらに改善してゆくつもりである。 3、高温セルの利用:現在製作を進めている。本年度中には完成させることが出来なかったが、今後主力の方法として開発を進めてゆく。 以上の方法についてより感度を高め、より検出の難しい大きな多重項活性種へ適用して行くつもりである。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Toshiaki Okabayashi,Mitsutoshi Tanimoto: "The pure rotational spectrum of AgH and AgD"Journal of Molecular Spectroscopy. 204. 159-160 (2000)
-
[Publications] Toshiaki Okabayashi,Mitsutoshi Tanimoto: "Laboratory Measurement of J=1-0 Transitions of Sodium Hydride and Potassium Hydride"Astrophysical Journal. 543. 275-277 (2000)