2000 Fiscal Year Annual Research Report
高いスピン多重度の励起状態を前駆体とする反応中間体のスピンダイナミクスの研究
Project/Area Number |
12740332
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森 幸恵 理化学研究所, 分子光化学研究室, 研究員 (90239624)
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Keywords | 光誘起電子移動 / 電荷分離状態 / 磁場効果 / スピンダイナミクス / 4重項-2重項変換 |
Research Abstract |
光誘起電子移動反応により生成する3つの不対電子を有する中間体のスピンダイナミクスを検討するために、電子供与体として亜鉛ポルフィリン(ZnP),受容体としてナフタレンイミド(NIm),安定ラジカルとしてTEMPO(R・)を連結した1R・,2R・と対照化合物1,2を合成した。 1R・:ZnP-NHCO-NIm-R・;1:ZnP-NHCO-NIm-C_6H_<13>; 2R・:ZnP-PIm-NIm-R・;2:ZnP-PIm-NIm-C_6H_<13>(PIm=pyromellitic diimide-N,N'-diyl) これらの化合物のZnPをC_6H_6,dioxane,THF等の溶媒中で光励起すると蛍光の分子内消光が起こり、ZnP^<・+>とNIm^<・->に帰属される過渡吸収スペクトルが観測されたことから、^1ZnP^*からNImへの電子移動により電荷分離状態(CS)が生成していることが示された。1由来のCSについては減衰速度の磁場依存性からznP^<・+>とNIm^<・->の間の交換相互作用が大きく(|2J|/gβ=0.9T)、ゼロ磁場で1重項-3重項変換が抑制されていることがわかった。一方、1R・由来のCSではゼロ磁場で2重項-4重項変換が効率よく起こっており、磁場強度を0Tから1.7Tまで増加するに連れてスピン緩和速度が減少した。2由来のCSでは|2J|が小さくその減衰挙動は1重項と3重項が縮重したビラジカルに特有の磁場効果を示し、2R・由来のCSの減衰は2由来のものより速く、スピン変換がより速いことが示された。以上より3スピン系は2スピン系と比較して(i)ゼロ磁場でのエネルギー準位が異なる、(ii)スピン変換がより速いことが明らかになった。
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