2000 Fiscal Year Annual Research Report
環状ポリアミンとアルカリ金属イオンを活用する四重らせん構造体の構築
Project/Area Number |
12740350
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
篠田 哲史 大阪市立大学, 理学部, 講師 (00285280)
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Keywords | サイクレン / アルカリ金属 / 四重らせん / ナトリウム錯体 / NMR / X線結晶構造解析 / 二核錯体 / 錯形成定数 |
Research Abstract |
12員環テトラアミン配位子「サイクレン」の四つの窒素上に、アミド結合を介してピリジン環およびベンゼン環を有する側鎖を導入した、「テトラアームドサイクレン」配位子を新規に合成し、アルカリ金属イオン錯体の安定性、および錯形成に伴う配位子の三次元構造の変化をNMR法およびX線結晶構造解析を用いて詳細に検討した。アームドサイクレン配位子は、大きさの適合するナトリウムイオンに対して高い選択性を示し、サイクレン環の窒素原子と側鎖の酸素原子の配位によって安定な八配位錯体を形成した。ナトリウム錯体の結晶構造から、四本の側鎖がナトリウムイオンの周りに四重らせんを形成し、導入した芳香環がナトリウム錯体上に空間的に集約して空孔を生じていることが分かった。 1当量のセシウムイオン共存下に結晶化を行うと、この空孔内にセシウムイオンが取り込まれ、Na-Cs二核錯体の単結晶が得られた。メタノール溶液中においても、空孔内へのアルカリ金属イオンの取り込みがNMR法によって確認でき、芳香環によって形成される空孔がイオン半径の大きなセシウムイオンやルビジウムイオンに対する選択性を有することを明らかにした。ナトリウム錯体が形成されていない場合にはこのような空孔が存在しないため、第二のイオンの包接がナトリウムイオンの存在の有無によって完全に制御されるというアロステリック認識機構が実現された。 本研究は、これまでに例の少ない安定な高次構造を有する単核および二核アルカリ金属錯体の合成を実現したのみならず、ナトリウムイオンによって他のイオン認識の制御を可能とする、アロステリック金属イオン認識機能を明らかにしたものである。
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