2000 Fiscal Year Annual Research Report
テトラチアフルバレン二量体を用いた強相関系有機合成金属の開発
Project/Area Number |
12740390
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
藤原 秀紀 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (70290898)
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Keywords | 有機伝導体 / 電子供与体 / 二量体構造 / カチオンラジカル塩 / 構造有機化学 / 結晶構造 |
Research Abstract |
研究代表者はこれまで新規なπ電子系拡張型ドナー分子の開発を行ってきたが。その中で、研究代表者が開発したトリチオ基で二架橋したテトラチアフルバレン(TTF)二量体は、その構成分子であるTTFが面をあわせた構造を有しており、分子内でTTF間に相互作用を有することが明らかとなっている。しかしながら、以前合成に成功した二量体分子は立体障害の大きな置換基を有しているために、良好な伝導性錯体を与えるには至っていない。そこで今年度、このTTF二量体分子について置換基の改良を行った。 すなわち、メチルチオ基の代わりにトリメチレン基を用いることに立体障害を減少させた二量体分子の合成に成功した。定電流電解法によってカチオンラジカル塩を作成したところ、溶媒分子を取り込みながら、ドナー:アニオン比が1:1の組成を持つPF_6塩が構造解析可能な良好な単結晶として得られた。この塩は二量体分子全体で+1価の電荷を持つため、TTF部分はおのおの+0.5価の電荷を持つという、電気伝導に適した部分酸化状態の電子構造を有している。分子構造もそのような部分酸化状態に対応し、中性と+2価の場合の中間の面間距離で二量体を構成していることが判った。このような構造は分子軌道計算から予測されたものに一致した。結晶構造を見ると、二量体分子が一次元分離積層カラム構造を形成している為、伝導パスが構築されており、室温で10^<-1>S/cm程度の良好な伝導性を有する半導体であることが明らかとなった。このような二量体分子を用いながら良好な伝導性を示す塩は今までに例が無く、今後の更なる発展、特に、金属状態の実現が期待される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] H.Fujiwara et.al.: "Preparation, structures and physical properties of selenium analogues of DTEDT as promising donors for organic metals"J.Mater.Chem.. 10. 1565-1571 (2000)
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[Publications] H.Fujiwara et.al.: "A Novel Antiferromagnetic Organic Superconductor κ-(BETS)_2FeBr_4 [Where BETS=Bis (ethylenedithio) tetraselenafulvalene]"J.Am.Chem.Soc.. 123. 306-314 (2001)
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[Publications] T.Otsuka et.al.: "Successive Antiferromagnetic and Superconducting Transitions in an Organic Metal, κ-(BETS)_2FeCl_4"Chem.Lett.. 732-733 (2000)
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[Publications] H.Tanaka et.al.: "A new κ-type organic superconductor based on BETS molecules, κ-(BETS)_2FeCl_4 [BETS=bis (ethlenedithio) tetraselenafulvalene]"J.Mater.Chem.. 10. 245-247 (2000)
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[Publications] L.Balicas et.al.: "Shubnikov-de Haas effect and Yamaji oscillations in the antiferromag-netically ordered superconductor κ-(BETS)_2FeBr_4: a fermiology study"Solid State Commun.. 119. 557-562 (2000)