2000 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素化アルキルのジアステレオ選択的ラジカル付加反応の研究
Project/Area Number |
12740397
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
矢島 知子 お茶の水女子大学, 理学部, 助手 (10302994)
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Keywords | ラジカル付加反応 / 含フッ素化合物 / ジアステレオ選択性 / 環境適応型反応 |
Research Abstract |
本研究では、α-メチレン-γ-アルコキシカルボン酸エステルへのトリフルオロメチルラジカルのジアステレオ選択的付加反応についての検討を行った。その結果、通常のラジカル付加生成物であるトリフルオロメチル基と水素、またはヨウ素がオレフィンに付加した生成物ではなく、オレフィンに対してトリフルオロメチル基と水酸基が導入された生成物が得られてきた。また、ジアステレオ選択性については、2対1と高いものではないが、これらのアイソマーはカラムクロマトグラフィーで容易に分離が可能である。これは、オレフィンに対して二つの置換基を同時に導入できる新しい反応といえる。さらに、条件検討を行うことにより、この反応は毒性の高い有機スズ化合物を用いずに、また、溶媒として塩化メチレンに代わりメタノール-水系でも反応が進行することを明らかにし、環境適応型の反応となり得ることを示した。一方、反応機構について、シンプルなα-メチレンエステルを合成しラジカル反応を行うという実験的な側面、中間体ラジカルの半経験的分子軌道計算による計算化学的側面、双方からの考察を行い、水酸基の導入の要因について電子不足オレフィンであることが鍵となることを明らかにした。今後はこの反応の適用限界、天然物への変換について検討する予定である。また、この反応の副生成物としてビストリフルオロメチル体が得られてきていることから、この生成物のジアステレオ選択的合成についても検討していく予定である。
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