2001 Fiscal Year Annual Research Report
3栄養段階における植物の質と気象の影響-ミカン―カイガラムシ―2寄生蜂群集を例として-
Project/Area Number |
12740424
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 みどり 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (20294910)
|
Keywords | 窒素 / 降水 / 落葉 / 食害 / 湿度 / ヤノネカイガラムシ / 葉齢 / 植物-植食性昆虫-捕食寄生者 |
Research Abstract |
■ミカン葉の落葉率への降水と冬期の低温の影響 宗像の5年間(1984〜1998年)の落葉率データを用いて、落葉への降水と冬の低温*の影響について重回帰分析を行った。結果、1〜2月の平均気温の上昇と年降水量の増加は落葉を緩和することが示唆された。 *12月、3月の月平均・月最低気温、および1〜2月の平均・最低気温、極低温 ■カイガラムシヘの降水とミカン葉の性質の影響 まず、土壌中窒素と水分量がミカン葉の性質に及ぼす影響について実験した。鉢植えミカンを、降雨処理が週1.0/と1.5/の2通り、および硫安(窒素)付加量が0%と1%の2通りをそれぞれ組み合わせた4実験区(自然光、25℃,70%r.h.)で生育させ、新葉の性質と食害(アブラムシやハダニによる)の有無を調べた。結果、窒素含有率は食害によって減少し、食害のない窒素付加および多降雨区で高く、含水率と強い正の相関を示した。突き刺し硬度は、食害によって増加し多降雨で高く、両者間の相互作用効果もあった。含水率とは強い負の相関を示した。炭水化物含有率は食害によって低くなった。 次にこれら異なる生育条件のミカン葉にカイガラムシ成虫を接種し、1齢幼虫の定着後、2齢に発育するまで湿度30%r.h.と75%r.h.の2実験区に置いて生存率を調べた。低湿度では、落葉率が高く、落下葉上の1齢の生存率は低かった。また、窒素付加によって生存率は上昇した。1齢幼虫の定着には葉の生育条件の影響は認められなかった。 異なる湿度区で鉢植えの状態のミカンに直接カイガラムシを接種したところ高湿度で窒素含有量が高く、また葉齢によって含水量が低下、窒素含有量が増加する事もわかった。 これらの実験より、ミカン葉の性質は、降雨・湿度や土壌中窒素と並行して植食性昆虫の食害の影響を受けることが判明した。うち窒素付加と多降雨・高湿度は、土中窒素の吸収促進によって葉中窒素を増加させ、カイガラムシの発育初期の生存率を高めたと考えられる。さらに低湿度によって落葉しやすくなり、おそらく葉の質の低下によって、葉上で固着生活をするカイガラムシの生存が低下したと考察される。
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] Tuda, M., Shima, K., Johnson, C.D., Morimoto, K.: "Establishment of Acanthoscelides pallidipennis (Coleoptera : Bruchidae) feeding in seeds of the introduced legume Amorpha fruticosa, with a new record of its Eupelmus parasitoid in Japan"Applied Entomology and Zoology. 36(3). 269-276 (2001)