2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12740428
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
山平 寿智 九州共立大学, 工学部, 講師 (20322589)
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Keywords | 環境勾配 / 緯度 / 成長率 / 変異 / 反応基準 / 表現型 / 遺伝子型 / メダカ |
Research Abstract |
緯度や高度といった環境勾配に沿った表現型の地理的変異パターン形成において,countergradient variation(CnGV)という現象が注目されている.CnGV(反勾配変異)とは,ある形質への遺伝的影響が環境による影響と逆行するような遺伝子型の地理的分布パターンのことである.魚類の成長率をコードする遺伝子型の緯度間でのCnGVをドキュメントするため,日本列島を南北に広く分布する淡水魚メダカ(Oryzias latipes)をモデルシステムとして,共通環境実験を行った.2000年5月から8月にかけ,本種成魚を様々な緯度(青森,茨城,兵庫,鹿児島,および沖縄)から採集し,実験室内で繁殖個体群として飼育した.各繁殖個体群から得られた稚魚の成長を20,25,28,32,35℃の5段階の水温のもとで追跡し,成長率の水温に対する反応基準を各個体群毎に測定・比較した.その結果,高緯度の個体群ほど遺伝的に速い成長能力を有することがわかった:青森メダカはどの温度のもとでも最も速い成長を示した一方,沖縄メダカの成長は最も遅かった.成長を遅らせる寒冷な高緯度環境ほど高い成長率の遺伝子型が偏って分布するというパターンは,まさにCnGVの典型例である.また,成長率が最大になる温度は,どの個体群とも28℃で同じであることもわかった.これらの結果は,本種はローカルな季節性に対して適応しており,各緯度の平均水温には適応していないことを示唆する.すなわち,本種は北方に地理的分布を拡大する過程で,高緯度の寒さ自身には対抗せず,短い成長シーズンを補うべく効率よく成長を終えるよう進化を遂げたものと考えられる.
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[Publications] Yamahira,K.: "Experimental examination of interpopulation variation in reproductive timing of a fish"Oecologia. (in press). (2001)
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[Publications] 山平寿智: "魚類の成長率における緯度間変異-GとEの相互作用と共分散に着目して-"日本生態学会誌. (印刷中). (2001)