2000 Fiscal Year Annual Research Report
多重結合を有するIV族表面上の原子・分子吸着構造解析
Project/Area Number |
12750023
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下村 勝 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (20292279)
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Keywords | 表面構造解析 / 半導体表面 / シリコン / 光電子回折 / エチレン / アンチモン |
Research Abstract |
本研究では、清浄でよく配列したIV族元素表面と不飽和炭化水素との相互作用に注目し、その第一段階として、最も単純なπ結合を有する炭化本素であるエチレンが吸着したSi(001)表面の構造を、シンクロトロン放射光を用いた光電子回折により解析した。十分に清浄化した単分域Si基板に、室温でエチレンを供給した。この試料の光電子回折を実験的に測定し、多重散乱を考慮したシミュレーションと比較を行ったところ、次のような結果が得られた。表面の構造は、これまでに報告があるように、シリコンダイマーの結合を切らずに2個のエチレンの炭素原子がシリコンダイマーのシリコン原子一つ一つにそれぞれσ結合するモデルが妥当である。しかし、これまで注目されていなかった吸着分子同士の位置関係を求めてみると、シリコンダイマー列内においては、隣り合うダイマー上にはエチレンは吸着しにくいことがわかった。 次に、Sb原子が吸着したSi(001)表面に対して、光電子回折による構造解析を行った。Si2pに関しては、内殻準位シフトを分解した解析を行い、主な表面成分の由来について明らかにした。また、Sb4dにより、構造パラメータの最適化も行った。本研究結果は、Surf.Sci.誌に既に受理されている。 最後に、Si(001)表面にベンゼンを供給した表面の構造をX線光電子により解析した。室温では、様々な研究結果から、バタフライモデルと呼ばれるベンゼンの1,4位の炭素とシリコンダイマーがσ結合したモデルが提案されているが、このモデルに基づくシミュレーションのみが、光電子回折による実験結果と一致することがわかった。これまでの第一原理計算による報告では、これ以外に、ベンゼン中の4つの炭素と下地のダイマーがσ結合するモデルの妥当性も示唆されていたが、このモデルシミュレーションと実験結果は明らかに異なっており、主たる表面構造としては適さないことが分かった。
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Research Products
(1 results)