2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12750169
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
百生 登 富山県立大学, 工学部・機械システム工学科, 助手 (80239590)
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Keywords | 凍結保存 / シミュレーション / 凍害保護物質 / 2段冷却法 / 最適制御 |
Research Abstract |
平成13年度は,平成12年度に行った浮遊細胞の最適凍結条件に対するシミュレーション結果を踏まえ,生物組織を対象とした凍結シミュレーションを行った.シミュレーションの対象は,個々の細胞の直径が30μm,組織の寸法は10,50,100mmとした.膜透過係数は小麦胚芽細胞の細胞壁を取り除いたプロトプラストの値を用いた. 組織表面の冷却速度を-5℃/minとした場合のシミュレーションでは,寸法が10mmの組織では全域で細胞内氷晶が形成され死滅し、寸法が100mmの組織では組織の中心付近で細胞脱水が多くなり細胞は死滅した.組織寸法が50mm,100mmの場合,組織表面から20mmのところで僅かではあるが,生存の可能性が見られた.この部分の温度履歴は両者ともほぼ一致しており,-0.1℃/minで-2℃まで冷却された後,約-2.0℃/minで-20℃まで急冷される2段冷却の形となっている.また,このときの細胞の体積は元の約40%となっている. しかしながら、生物組織の凍結はそのままでは困難であり凍害保護物質の利用が必須である.10%,20%,30%のglycerolを用いたシミュレーションでは,濃度が高いほど,生物組織表面での冷却速度が遅いほど効果が見られた. 2段冷却法の観点からは,組織表面の冷却速度を徐々に加速してやり,細胞を約40%まで脱水収縮させた後急速に冷却し細胞脱水をとめてやるのが望ましいが、本研究では最適操作条件を決定するには至らなかった.これは、本研究で用いた代表者らの凍結解凍モデルには細胞内での確率的核生成が含まれており不連続性を有するため,逆問題の解としての最適解が得られないためである.解決策としては、代表者らの凍結解凍モデルを単純化したモデルをもとに制御系を設計することがか考えられる、その上で代表者らの凍結解凍モデルに適応することにより有効性を確認する必要がある.
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