Research Abstract |
本研究課題に対して,初年度は,まず理論解析では,大変位,大変形を伴う弦の運動の定式化および数値シミュレーション,また実験では実験装置の設計,製作を行った. 弦の運動については,水中環境を考えて行く上で,先端機ならびにケーブルに作用する浮力の影響により張力が微小になる場合が想定される.そのような状況下では,弦の慣性力が系の運動におよぼす影響が無視できず,したがって弦の大変形,大変位問題を考慮する必要がある.そこで,今年度は,弦の大変形問題の基本的な定式化を行った.さらに,先端に剛体系を結合し,弦と先端機との相互作用について把握することを目的とした.理論解析では,これより主に以下の知見を得た. (1)弦について,非線形有限要素法を用い,軸方向応力によって張力を表し大変位,大変形を表現し実験結果と数値シミュレーション結果を比較し妥当性を示した. (2)以上の定式化に基づき,数値シミュレーションを行い,大変位,大変形を伴う弦の運動について以下の特徴的な現象を示した. (a)自重を考慮した大変位の振り子運動では弦内部での張力分布が異なるため大変位時の特別なモードを有する. (b)弦が静止状態から加速を伴って移動する場合に弦下端の運動軌跡には,弦の伸び,張力分布の影響が表れ複雑な挙動を示す. (c)弦に拘束された質点の自由落下時の跳ね返り挙動を示し,この運動に対する弦の拘束的役割を明示した. 一方,実験装置については,以下の機能を有するよう設計を行った.すなわち, 1.弦の伸展・回収 2.母船の移動に関わる弦上端の平面移動 3.水中環境を実現する水槽 である.測定は,CCDカメラを利用した画像処理設備により行い,弦,先端剛体系の運動について調べることができる.本装置を用いて,上記理論解析結果で示された特徴的な現象を実験的にも捉えることができ,理論解析の妥当性を基本的に確認することができた.
|