2000 Fiscal Year Annual Research Report
極短周期CaAs系平面超格子構造における量子輸送現象に関する研究
Project/Area Number |
12750266
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 雅史 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (20273261)
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Keywords | 平面超格子 / 電子線露光装置 / 電流磁気特性 / Weiss振動 / 単一量子井戸 / ポテンシャル変調 / フーリエスペクトル / シュブニコフ・ド・ハース振動 |
Research Abstract |
本年度は,GaAs/AlGaAs単一量子井戸構造を有する基板表面に,電子線露光装置とウエットケミカルエッチングを用いて,周期が60nm,80nm,100nm及び150nmのラインアンドスペース(L/S)構造を作製した.量子井戸内部の変調ポテンシャルの振幅を変化させるため,エッチング深さを5nm,7nm及び10nmとし,電流磁気特性の測定を4.2Kで行った.試料中のキャリア密度は光を照射して変化させた. エッチング深さが5nmの試料では2次元の試料と変わらず,エッチングによるポテンシャルの変調が2次元電子ガスに達しなかったためと考えられるが,エッチング深さが7nm及び10nmの試料においては,測定結果に対する高速フーリエ変換スペクトルを調べると,シュブニコフ・ド・ハース(SdH)振動と考えられるピークが2個所観測できた.これはL/S構造を作製した領域に対応するSdH振動と2DEG領域に対応するSdH振動が同時に観測されたためと考えられる.周期80nm,100nm,150nmの試料では,磁気抵抗に明確にWeiss振動が観測でき,またフーリエスペクトルにおいても理論値と一致する位置にWeiss振動のピークが観測できた.しかし,周期60nmの試料においてはWeiss振動の観測はできなかった.全ての周期においてIT以下にSdH振動やWeiss振動とは異なるピークを観測した.これは周期ポテンシャルによる影響が現れたものと解釈されている.このピーク位置から周期ポテンシャルの振幅を求めたところ,周期が短くなるにつれ振幅が減少することがわかった.また,キャリア密度を増加すると,周期60nmの試料においてはIT以下で観測されたピークが消失した.これらの結果から周期60nmの短周期構造では,電子は古典的な質点として扱うことができず,量子論的な波束として扱う必要があると考えられる.
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