2001 Fiscal Year Annual Research Report
五重塔の歴史地震による被災状況とその力学的機構に関する解析的研究
Project/Area Number |
12750519
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤田 香織 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 講師 (20322349)
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Keywords | 伝統的木造建築 / 木造層塔 / 歴史地震 / 振動特性 / 組物 / 常時微動測定 / 心柱 |
Research Abstract |
現存する国宝・重要文化財建造物の塔婆建築(五重塔、三重塔、多宝塔など)125基のうち、五重塔は25基(うち国宝13基)である。これらのうち,屋内にある五重小塔(3基)を除外した22基について,昨年度は,建設年・構造形式・修理履歴を対象にデータベースを作成したが,本年はこれに加えて以下の項目を調査しデータに加えた.(1)地質図から調べた地盤条件,(2)被災記録,(3)水平力抵抗要素に関する詳細な検討.この結果,現存する五重塔の約7割は洪積層に立地している,7回の地震で5塔の五重塔に被害の記録がある,被害の内容は相輪付近に集中していることが明らかになった。また,被害を受けた五重塔の特徴としては,沖積層上に立地している,本瓦葺きなど重い屋根材料を用いている,水平力抵抗要素の配置に偏りがあるなどの傾向が認められた.更に,歴史地震史料から木造層塔建築の被害の記録を拾い出したところ,23件の被害記録が確認でき,その内容は:倒壊(3割),破損(2割),傾斜(1割),部分被害(4割)に分類できた.また,部分の被害のほとんどは九輪付近の被害であることから,地震により相輪及び心柱が大きく振動し塔本体と当たっている可能性が示唆された. 池上本門寺の常時微動測定及び人力加振試験を行った.建物の基本的な振動特性を明らかにするとともに,人力加振試験の際には心柱と本体が約90°の位相差で振動することを定量的に明らかにした.実験及び解析結果をシンポジウムで口頭発表を行った.五重塔建築の耐震性に深く影響していると考えられる構造要素である組物について,過去に行った振動台実験及び静加力試験の結果を基に理論的なモデル化をおこない,地震応答解析を行い,実験結果を理論的に再現することが可能になった.
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[Publications] 藤田香織 (他): "静的水平加力試験に基づく伝統的木造建築の組物の履歴モデルと剛性評価"日本建築学会構造系論文集. 543・5月号. 121-127 (2001)
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[Publications] 藤田香織: "ダボとガタ"建築雑誌. 116・1472. 51 (2001)
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[Publications] 藤田香織: "伝統的木造五重塔の振動実験"パッシブ制振構造シンポジウム. 213-218 (2001)
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[Publications] Kaori FUJITA et al.: "Shaking Table Tests and Analyses of Walls used in Traditional Timber Structures in Japan"Proceedings of IABSE Conference Innovative Wooden Structures and Bridges. (CD-ROM). (2001)