2000 Fiscal Year Annual Research Report
専門家・非専門家の空間設計に見られる描図過程の認知論的研究
Project/Area Number |
12750544
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 ゆりか 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (20251324)
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Keywords | 建築設計教育 / 設計方法論 / 図形科学 / 描画心理学 / ドローイング |
Research Abstract |
平成12年度には、主として設計に習熟していない非専門家による設計過程を採集し、彼らが設計のために図を描くプロセスがどのような認知的特徴(「図式」)を反映しているのか、また設計に習熟するためには描図プロセスにどのような認知的転換が必要かについて分析・考察した。 建築を対象とする場合、通常は大人にとってもドローイングの内容を瞬時に紙面に写すことは不可能である。したがって1枚のドローイングを描く時には、何を描出するかという個々の部分の知識と同時に、それをどのような順序で描き進めれば適切な完成形に至るかという、描図順序に関する方略の知識を必要とする。ことに描図に慣れていない非専門家にとっては、一枚の図面を描くときの方略の影響が大きいことが予想された。したがって21名の非専門家が設計を行う過程をVTRおよび関連機材を用いて観察調査し、その作成する図面に見られる特徴、-ここではゆがみとして特に被験者の意図しない不整合の現れの問題-に、描図順序の影響がみられるか、検討し考察を行った。 分析の結果、被験者の作成した図面には意図されないゆがみが見られること。設計途中の諸室の描図シークエンスを見ると、「室」「廊下枠」「外枠」「分割枠」の4種類の閉曲線が利用されていること。これらを利用しながら被験者がとる描図シークエンスは5つのタイプに整理されること。5タイプのうち事例のほとんどを含む4タイプは1度に1室を決めることを次々と列ねるリニアーなシークエンスであるという共通点をもつこと。図面に見られた意図されないゆがみは、リニアーなシークエンスで最後あるいは残余の部分にあたることが確認された。以上から非専門家の間取りの設計にみられる描図シークエンスには一定の型が見られ、それができあがり図面に影響を与えていることが確認された。このように非専門家の描図順序に定型があり、それができあがりの図面のゆがみを生じさせているとすると、非専門家が住宅平面の高度な「図式」を獲得し、間取り設計のスキルを向上させるためには、それぞれがとらわれている描図順序の方略を変換させるための知識が求められると考える。
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Research Products
(1 results)