2000 Fiscal Year Annual Research Report
ゴム変性によるエポキシ樹脂の高靭化と耐衝撃性に関する研究
Project/Area Number |
12750613
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (80274538)
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Keywords | エポキシ / ポリマーアロイ / 破壊靭性 / 高靭化機構 / き裂進展 |
Research Abstract |
2種類のエポキシ樹脂(脆性的樹脂と延性的樹脂)と2種類のゴム(液状ゴムと架橋ゴム)を用いてゴム変性エポキシ樹脂を作製し,モードI破壊靭性を測定すると共に,走査型電子顕微鏡と偏光顕微鏡を用いて破壊形態の観察を行った.得られた実験結果に基づき,破壊靭性に及ぼすゴム相の影響と高靭化のメカニズムについて考察した.得られた結果は以下の通りである. (1)汎用の脆性的エポキシ樹脂と液状ゴムを用いて作製した材料の破壊靭性は,ゴム含有率の増加と共に向上した.この材料では,ゴム相は直径数μmの粒子の状態で存在し,分散するゴム粒子が高靭化において重要な役割を担っている.高靭化のメカニズムとしては,ゴム粒子周囲で生じる剪断塑性変形,ゴム粒子のキャビテーション等による付加的なエネルギー散逸が考えられる. (2)延性的なエポキシ樹脂に液状ゴムを添加して作製した材料では,破壊靭性の向上は見られず,逆に破壊靭性はわずかに低下した.この材料の場合も,ゴム相は直径数μmの粒子の状態で存在するが,樹脂が延性的な場合,ゴム相周辺部での応力集中による樹脂の局所的塑性変形が生じず,逆に破壊の発生を早める結果になると思われるが,その詳細なメカニズムは今後の検討課題である. (3)延性的なエポキシ樹脂に架橋ゴム粒子を分散させた材料では,破壊靭性の向上が見られた.特に,ゴム粒子の含有率を増加させると,き裂進展に対する抵抗特性が大幅に向上した.架橋ゴムを分散させた場合,ゴム相は最大長さが数百μmの塊として存在し,脆性エポキシ樹脂とは異なる高靭化のメカニズムが観察された.未変性エポキシ樹脂は平坦な破壊面を示していたのに対し,き裂はゴム相中や界面を蛇行あるいは分岐しながら進展し破面は粗い状態を示していた.このように,この材料ではき裂進展により多くのエネルギーが費やされ,高靭化が達成されたことがわかる.
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