2000 Fiscal Year Annual Research Report
Fischer型カルベンルテニウム錯体の触媒機能に関する研究
Project/Area Number |
12750770
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
片山 博之 大阪市立大学, 工学部, 助手 (50315975)
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Keywords | Fischer型カルベン錯体 / オレフィンメタセシス / 開環クロスメタセシス / 環状オレフィン / ビニルカルコゲニド / 16族元素 |
Research Abstract |
遷移金属カルベン錯体は,アルキリデン配位子をもつSchrock型と,酸素や窒素などのヘテロ元素で置換されたカルベン配位子をもつFischer型に大別される.一般に前者は,有機合成化学的に重要なオレフィンメタセシス反応を効率的に触媒することで知られている.一方後者が同反応の触媒として機能することはこれまでほとんど知られていなかった.本研究では,一連の16族元素(Y=O,S,Se,Te)をもつRuCl_2(=CHYR)(PCy_3)_2(R=アルキル基,アリール基など)型錯体が優れたオレフィンメタセシス活性を示すこと,およびこれらを触媒中間体として利用することによって,従来困難であった歪んだ環状オレフィンの開環クロスメタセシス反応が高選択的に進行することを見出した.例えば,ノルボルネンとフェニル(ビニル)セレニドの等量混合物の塩化メチレン溶液に触媒としてRuCl_2(=CHSePh)(PCy_3)_2を2mol%添加し,室温で2時間反応させると,開環クロスメタセシス生成物である非対称ジエンが単離収率92%で得られた.環状オレフィンとしてはノルボルネンのほかに7-オキサノルボルネン誘導体や5,6-二置換ノルボルネン誘導体が適用可能であり,いずれの場合も高収率で目的生成物が得られた.さらに,本触媒反応の各素反応について錯体化学的に詳しく検討した結果,Fischer型カルベン錯体の高い熱力学的安定性が,触媒反応における基質選択性を制御する支配因子であることを明らかにした.以上の成果は,触媒的オレフィンメタセシス反応の基質選択性に新しい制御概念を提供したこと,ならびにFischer型カルベン錯体の新しい触媒機能を開拓した点で重要である.
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