2001 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポゾンの挿入を指標にしたイネ属植物における生態型分化機構の解明
Project/Area Number |
12760001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金澤 章 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (30281794)
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Keywords | 野生イネ / トランスポゾン / 生態型 / MITE / 適応的分化 |
Research Abstract |
栽培イネOryza sativaは、野生イネO.rufipogonの種内に適応的分化が生じた結果、成立したものと考えられている。この野生イネには、栄養繁殖・他殖を主体とした多年生型から、それから派生したと考えられる種子繁殖・自殖を主体とした一年生型まで多様な変異が見られる。申請者は、前年度の研究において、miniature inverted-repeat transposable element(MITE)のイネゲノムにおける挿入を見出し、特にミトコンドリアF_1-ATPase εサブユニット遺伝子のイントロン中におけるMITEの挿入の有無がO.rufipogonにおいて多年生型、一年生型といった生態型の分化と関連していることを見出している。この因子の挿入がイントロン内にあることから、想定される影響のひとつとして、イントロンのスプライシング効率が影響を受けている可能性が想定されたが、本研究において、この遺伝子のmatureなmRNAとpre-mRNAとの量比をみた限りにおいては、MITEの挿入の有無との明確な相関は見られなかった。一方、O.rufipogonの生態型の分化機構とMITEの挿入との関連が、この遺伝子座に特異的なものであるかを検討した。εサブユニット遺伝子座以外の遺伝子座におけるMITEの挿入の有無を解析したところ、生態型の分化との関連を示さなかった。また、O.rufipogon以外にAAゲノムに属する4種の野生イネに関してひろく解析を行なったところ、MITEの挿入の有無は種分化とは関連するものの、O.rufipogonでεサブユニット遺伝子座において見いだされたような生態型との関連は見られなかった。従って、同じAAゲノムに属する種の間において、生態型の分化機構、もしくは生態型の分化に密接に関わる遺伝子座が異なっていることが示唆された。
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