2000 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の生殖に及ぼす内分泌攪乱化学物質のエストロゲン受容体を介した作用機構の解析
Project/Area Number |
12760127
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
東藤 孝 新潟大学, 理学部, 助手 (60303111)
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Keywords | 環境ホルモン / エストロゲン / 核内受容体 / メダカ |
Research Abstract |
魚類における内分泌攪乱化学物質のエストロゲン受容体(ER)を介した作用機構を明らかにする目的で、メダカをモデルとして以下の研究を行った。 近年、ERにはαとβの2つのタイプが存在することが明らかとなったが、メダカではまだαタイプの1種類しか知られていない。そこで先ず、メダカERβのcDNAクローニングを行うことにより、メダカにおけるERβの存在を確認するとともに、2種類のERの構造や機能について比較・検討した。 メダカ卵巣由来のcDNAを鋳型とし、魚類ERβの保存配列に基づく縮重プライマーを用いたPCRにより、ERβcDNA断片を増幅した。得られたcDNAは1487塩基対でアミノ酸496残基をコードするものであった。相同性解析の結果、このcDNAのアミノ酸配列はERβのN末端側のA/B領域からC末端側のリガンド結合領域までのほとんどの部分を含んでいることが分かった。またこのアミノ酸配列をメダカERαのそれと比較したところ、DNA結合領域で93%、リガンド結合領域では60%と高い相同性を示したが、他の領域では相同性がみられず、配列全体の相同性は40%程度であった。しかし、他魚種のERβとの間では、DNA結合領域(93-99%)とリガンド結合領域(71-90%)以外の領域でも比較的高い相同性がみられ、特にティラピアERβではA/B領域で71%、D領域でも62%と高い相同性が示された。さらに分子系統樹による解析からも、得られたcDNA断片がメダカERβであることが確認された。従ってメダカにおいても少なくとも2種類のERが存在することが明らかとなった。次に、メダカにおけるERα mRNAとERβ mRNAの発現組織をRT-PCR法により解析した。ERα mRNAは肝臓と生殖腺(卵巣と精巣)にのみ発現していたが、ERβmRNAは調べた組織のほとんどで発現が認められた。このように2種類のER mRNAの発現組織に違いがみられることから、エストロゲン(または内分泌攪乱化学物質)作用において2種のERは異なる役割を担っている可能性が高いと考えられた。
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