2000 Fiscal Year Annual Research Report
空間スケールに対応した農村生態環境評価に関する研究
Project/Area Number |
12760158
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
東 信行 弘前大学, 農学生命科学部, 助教授 (40262977)
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Keywords | 生態系 / 農村 / 環境評価 |
Research Abstract |
本年度は,環境評価指標となる生物に関する生態調査を中心に行った. 1.水路-水田生態系 メダカの生態調査から,そのマイクロハビタットの季節的環境特性の変化を明らかにした.その過程で幹線水路と網目状配置される小水路そして水田や周辺の一時的水域などを季節的(生活史的)使い分けがなされていることが明らかとなり,高密度の個体群維持には水系の連続性が必要となる結果を得た.また,圃場実験から,メダカや2種のゲンゴロウを含む多くの水生昆虫は稲の植えられていない自然に発生したコナギなどの水生植物帯場所を好み,反対にモツゴや数種のトンボ類は稲の植わっている範囲を選好した.これらから,野生生物にとってのマイクロハビタットとしての耕作水田・休耕田の質的な意味が明らかになった.繁殖期のゴイサギは水田・水路に加え河川で採餌を行い,主なエサはドジョウを含む魚類と水生昆虫,カエル類であった.採餌場所は繁殖コロニーから約15kmの範囲に及んだ.採餌場所の決定には,その時の採餌効率を基準にしていることが示唆された.採餌効率が低下した場合には採餌場所の移動が確認された.また異なる水田間における採餌効率の比較から,個体ごとの採餌効率はほぼ等しいことが明らかとなった. 2.果樹園生態系 リンゴ園内のリンゴの樹洞内で繁殖するフクロウの食性と利用空間を調査した.リンゴ園で繁殖するフクロウは食料の大半を園内に高密度で生息するハタネズミに依存しており,森林に生息するフクロウが森林性のネズミを主食とするのとは異なる結果を得た.またエサとなる鳥類もほとんどが都市部や農耕地に多いカワラヒワであった.巣立ちビナは果樹園周辺の林などをしばらくの間利用することから,林とリンゴ園の組み合わせが高い密度での繁殖を可能にする原因となっていることが示唆された.
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