2000 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯半乾燥地に生育する樹木作物の持続的水利用に関する基礎的研究
Project/Area Number |
12760177
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樋口 浩和 京都大学, 農学研究科, 助手 (50303871)
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Keywords | 熱帯 / 乾燥地 / 水利用 / 樹木作物 / 果樹 / 土壌水分 / 蒸散 / 環境 |
Research Abstract |
土壌水分が深層に集中して存在する条件は乾燥地の乾季に普通に見られるものである。こうした条件を人工的に作り出すために、マンゴ樹が栽植されている2m四方の区画に深さ80cmの仕切り板を挿入し、外部からの水平方向の土壌水分の浸透がないようにした。約2ヶ月間潅水を停止したところ、浅い層の土壌水分は含水率10%程度、深い層では25%以上が維持されていることがTDR法によってわかった。マンゴ樹は浅層の土壌水分の減少にもかかわらず、潅水を続けたマンゴ樹と同じ程度の蒸散流量を維持したことがヒートバランス法で確認された。ライシメータ法で測定した蒸発散は日を追うに従って低下したが、2-3mm以下にはならなかった。マンゴ樹の存在によって地下水が汲み上げられ、マンゴの生育が続けられるとともに、表土の湿度が維持されていることが示唆された。 熱帯半乾燥地に生育するマンゴ樹の水分動態を理解するため、タイ東北部のコンケンで実験を行った。実験期間中降雨は観察されなかったが、マンゴ樹の樹冠下では、表層30cmの土層で8%前後の土壌水分が維持されていたのに対して樹冠外部では5%程度であった。マンゴは草地に独立して栽植されていたが、この草地での期間中の蒸発散量は一日あたり1mm程度であり、この値は地下40cmにビニールシートを埋設して計測した毛管上昇量とほぼ一致した。一方、マンゴ樹による一日の蒸散量は数十リットルに上り、樹木が栽植されていることで、大量の水分が地下深くから植物体を通って大気中にまたは土壌の浅い層に放出されていることがわかった。このような植物の機能によって、乾燥した大気や表土の環境が緩和されていることが示唆された。
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