2000 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞のアポトーシスの分子機構に対する生理的なずり応力の影響
Project/Area Number |
12760193
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丹羽 光一 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (20301012)
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Keywords | 血管内皮細胞 / アポトーシス / 過酸化水素 / 細胞内カルシウム / p53 / PI 3-キナーゼ / Akt / ずり応力 |
Research Abstract |
1.培養したウシ血管内皮細胞を過酸化水素(1mM)で刺激した.このときのアポトーシスおよび細胞内シグナル伝達経路を調べ,以下の結論を得た(論文執筆中). (1)過酸化水素は内皮細胞のDNA断片化を引き起こし,この断片化はカスペース阻害剤および細胞内カルシウムキレーター(BAPTA)で抑制されることから,過酸化水素が内皮細胞にアポトーシスを引き起こし,このアポトーシスが細胞内カルシウム濃度に依存していることが分かった. (2)過酸化水素により,内皮細胞のp53およびBaxの蛋白量の増加,Bcl-2の蛋白量の減少,およびチトクロームcの細胞内への流出が引き起こされた.また,これらの変化は,BAPTAで抑制された.このことから過酸化水素によるアポトーシスはp53依存性で,p53の蛋白発現がカルシウムにより調節されていることが示唆された. (3)過酸化水素によるアポトーシスはPI 3-キナーゼ阻害剤(ワートマニン)で増強されることから,PI 3-キナーゼによる生存シグナルの存在が示唆された.実際,過酸化水素によりPI 3-キナーゼおよびその下流にあるAktの活性化が認められた.またPI 3-キナーゼの活性化はBAPTAで抑制されなかった.このことから,過酸化水素による生存シグナルの活性化には,細胞内カルシウム濃度の上昇が必要でないことが分かった. (4)以上の結果から,過酸化水素が血管内皮細胞のアポトーシスと生存シグナルの両者を活性化し,前者はp53およびカルシウム依存性であること,後者はカルシウムに依存しないことが明らかとなった. 2.内皮細胞にずり応力(シェアストレス)を負荷する装置(回転円盤型)を作製した.この装置を用いて,細胞に生理的なずり応力を負荷しながら24時間培養することがが可能であることを確認した.
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