2000 Fiscal Year Annual Research Report
鍼刺激が脳局所血流に及ぼす影響とその神経性調節機序
Project/Area Number |
12770036
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
内田 さえ (財)東京都老人総合研究所, 研究員 (90270660)
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Keywords | 鍼 / 大脳皮質局所血流 / 大脳皮質アセチルコリン量 / 体性求心性神経 / コリン作動性神経 / ラット / 前脳基底部 |
Research Abstract |
本年度は、麻酔ラットを用いて鍼刺激が大脳皮質局所血流に及ぼす効果とその神経性機序を調べた。具体的には(1)種々の部位への鍼刺激が大脳皮質局所血流に及ぼす効果、(2)鍼刺激による脳血流反応の求心路、(3)鍼刺激による脳血流反応に対するコリン作動性神経の関与を検討した。 ウレタンで麻酔したラットの頭頂葉の大脳皮質局所血流をレーザードップラー血流計を用いて連続測定した。顔、前肢、胸、後肢など生体の種々の部位に、直径340μmの鍼を約5mm刺入し、約1Hzで1分間左右に回転させる刺激を行った。 顔、前肢、後肢に加えた鍼刺激は、全身血圧と大脳皮質血流を有意に増加させたが、胸部への鍼刺激はこれらに対して有意な変化を及ぼさなかった。第1-2胸髄で脊髄を切断すると、顔や前肢の鍼刺激による昇圧反応は減弱したが、大脳皮質血流増加反応は依然として観察された。前肢刺激による大脳皮質血流増加反応は、前肢の皮膚と筋肉を支配する体性求心性神経の切断により消失した。また、前肢刺激は前肢支配の体性求心性神経活動を増加させた。鍼通電刺激を用いた実験から、前肢鍼刺激は前肢支配の体性求心性神経のIII群とIV群線維の興奮によって起こることがわかった。前肢鍼刺激による大脳皮質血流増加反応は、大脳皮質細胞外アセチルコリン量の増加を伴い、ムスカリン性およびニコチン性アセチルコリン受容体遮断薬(atropine 5mg/kgおよびmecamylamine 20mg/kg)の静脈内投与あるいは前脳基底部破壊により消失した。 以上の結果から、鍼刺激は血圧とは無関係に大脳皮質局所血流を積極的に増加させること、この反応は鍼刺激部位を支配する体性神経を求心路とし、脳内の前脳基底部コリン作動性神経を介することが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)