2000 Fiscal Year Annual Research Report
DNAメチル化による遺伝子発現不活化を回避するレトロウイルスベクターの開発
Project/Area Number |
12770160
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
古田 里佳 関西医科大学, 医学部, 助手 (80309244)
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Keywords | レトロウイルスベクター / サイレンシング / HTLV-1 / U3 / Tax / EL4 cell |
Research Abstract |
レトロウイルスベクターのin vivoにおけるサイレンス機構の解析とその回避の道を探る目的で、マウスリンパ腫細胞株EL4にEGFPを発現するMoMLV由来のレトロベクターを組み込み、同系マウス腹腔内に移植した。その結果、非免疫のマウスでは約2週間で、あらかじめEGFP発現EL4細胞で免疫した個体では48時間以内にGFPの発現低下が認められた。この事実は、GFPの発現低下は宿主免疫系によるGFP低発現細胞選択の結果であることを強く示唆しているが、同細胞をin vitro培養に移してもGFPの発現は回復しなかったことから、発現抑制がMoMLV-LTRのゲノムレベルでの不可逆的なものであると考えられた。次に、ベクターの転写調節領域(U3)をHTLV-1 LTRのU3と入れ替え、EGFPをHTLV-1 Taxとの融合蛋白(Gax)と交換したところ、EGFP発現EL4細胞の場合と同様に、Gaxの発現はマウス個体内において低下した。ところが、同細胞をin vitro培養に移すと数時間でGaxの発現が回復し始め、マウス腹腔内におけるHTLV-1 LTRによるGax発現の抑制は可逆的であることが示された。これらの結果は、レトロベクターのLTRあるいは発現する遺伝子産物により、サイレンスの様式が異なることを強く示唆している。また、HTLV-1感染T細胞におけるウイルスの発現も個体内では抑制され培養系に移行後に発現が観察されることから、同実験系はヒトにおけるHTLV-1発現制御機構を解析する上で有用な系を与えると考えられる。今後、可逆的なサイレンス機構におけるLTR U3領域および発現遺伝子の関与を、細胞性免疫、液性因子あるいはゲノムのCGメチレーションやヒストンアセチル化との関連において解析するとともに、U3領域の改変によるサイレンスの調節・回避を検討する。
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