Research Abstract |
癌細胞の浸潤・転移には,細胞外マトリックスの分解が必須であり,matrix metalloproteinases(MMPs)はその中心的役割を果たしている。Tissue inhibitor of metalloproteinases(TIMPs)は,MMPsの特異的な阻害剤で,癌の浸潤・転移を抑制すると考えられているが,TIMP-1,-2は,腫瘍細胞に対してオートクリンの増殖因子としても機能しうる。本研究は,TIMP-3,-4の肝癌における発現を検討した。 ヒト肝癌細胞株(HepG2,Huh7,PLC/PRF/5,HLE,及びHLF)から全RNAを抽出した後,random hexamerを用いて,逆転写酵素によりcDNAを合成した。PCRにより,肝癌培養株でのTIMP-3の発現レベルを調べ,また無血清下にTumor necrosis factor(TNF)-α100unit/ml,あるいは12-o-Tetradecanoylphorbol 13-acetate(TPA)50ng/mlに調整し,TIMP-3の発現に及ぼす影響を検討した。PLC/PRF/5に関しては,MMP-2,MMP-9,MT-MMP及びTIMP-4の発現についても検討した。 ヒト肝癌細胞株は,いずれも無血清培養液未刺激下において,TIMP-3の発現を認め,TNF-α,あるいはTPAによりTIMP-3の発現が増強した。PLC/PRF/5は、無血清培養液未刺激下において、MT-MMP及びTIMP-4の発現を認め,MT-MMPに関しては、TNF-αあるいはTPAを添加することによりその発現が増強した。MMP-2及びMMP-9の発現はTNF-αあるいはTPAを添加しても認めなかった。 肝癌培養細胞株において,未刺激下でもTIMP-3,-4の発現が認められ,肝癌に対しても,TIMP-3,-4が機能している可能性が示唆された。
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