2000 Fiscal Year Annual Research Report
大腸がん浸潤・転移制御におけるFrizzled/Wntシグナル分子解析
Project/Area Number |
12770265
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
有村 佳昭 札幌医科大学, 医学部, 助手 (80305218)
|
Keywords | 大腸がん / MMP-7 / Frizzled / Wnt / micrometastasis |
Research Abstract |
1.外科的に摘除された大腸smがん100例を対象とし,パラフィン包埋ブロックから代表切片を薄切した.抗MMP-7,抗β-catenin,抗cytokeratinモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検討により,がん浸潤先進部のsprouting.MMP-7タンパクレベルの発現およびその発現様式を検討した.MMP-7は大腸smがん浸潤先進部のとくにsprouting(簇出)した個々のがん細胞に選択的に過剩発現し,その発現パターンは腺腔側(apical)および基底側(basilar)に大別された.また,分泌タンパクとして極性の失われた発現様式と考えられるbasilarパターンを呈した場合,独立したリンパ節転移の危険因子であることが明らかにされた.ロジスティック回帰分析では,大腸smがん浸潤先進部がん細胞にMMP-7タンパクがbasilarに発現した場合,そのリンパ節転移のodds比は約12倍であった. 2.Frizzled/Wntシグナル分子であり,かつ細胞間接着機構の中心的役割を担うE cadherin/catenin系の細胞膜裏打ちタンパクであるβ-cateninに着目して,がん浸潤先進部におけるその発現量と細胞内局在に関し,MMP-7発現様式と比較検討した.β-cateninはがん細胞質内に過剰に蓄積し,がん浸潤先進部に核内過剩発現する傾向を認めたが,β-catenin核内発現とMMP-7発現様式とは明らかな相関を認めなかった.少数例の検討ではあるが,FAP(家族性大腸腺腫症)に合併したデスモイド腫瘍では腫瘍細胞の90%にβ-cateninの核内発現が認められ,かつMMP-7は大部分の細胞質に過剰発現が認められ,FAPと散発性大腸がんでは浸潤・転移機構に果たすFrizzled/Wntシグナル伝達系の重要性に相違があることが示唆され検討中である. 3.Frizzled/Wntシグナルが活性化された大腸がん細胞株を用いて,β-catenin,Tef/LefなどのFrizzled/Wntシグナル分子のアンチセンス,ドミナントネガティブ導入株あるいは強制発現系におけるin vitroおよびin vivoにおける浸潤・転移能を解析し,Frizzled/Wnt系が浸潤・転移制御の新たなターゲットになりうるか,現在検討中である.TCFのβ-catenin結合部位を欠損したconstructを作製し,構成的にTef/Lefが活性化された大腸がん細胞株DLD-1を用いて,安定したトランスフェクタントを得た.そのドミナントネガティブ導入株は培養シャーレでの足場非依存性増殖抑制および接触阻止の回復が認められ,その浸潤能の低下が示唆された.現在,in vitroおよびin vivoにおける浸潤・転移能に関し解析中である. 4. 大腸smがん内視鏡治療後の取扱いに関する無作為比較対照試験のバイロットスタディーとして,とくに,がん浸潤先進部に発現するMMP-7などの機能分子をターゲットとしたmicrometastasis検出系の確立をめざして,多数例で検討中である.以上のように、大腸smがん内視鏡治療後の取扱いに関する臨床試験の準備が整いつつある.
|
Research Products
(2 results)