2000 Fiscal Year Annual Research Report
フォスカルネット耐性ヘルペスウイルス感染症の治療法と近速診断のための基礎研究
Project/Area Number |
12770416
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
西條 政幸 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 研究員 (50300926)
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / フォスカルネット / アシクロビル / 耐性 / チミジンリン酸化酵素 / DNA合成酵素 |
Research Abstract |
アシクロビル(ACV)耐性単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染症の既往のあるWiskott-Aldrich症候群患者に対する免疫能構築のためHLA一致同種骨髄移植を施行した.増悪したHSV-1感染による皮膚病変に対しフォスカルネット(PFA)投与療法を行ったが,PFA投与約1ヶ月後にPFA耐性HSV-1(R98/3株)が分離された.PFA投与前に分離されたACV耐性HSV-1(R98/l株)のチミジンリン酸化酵素(TK)遺伝子には,1061-1064番目の塩基配列にみられる4連続するCの配列からのCの1塩基欠損が認められた.このTK遺伝子変異は,1994年以降本患者から分離されたACV耐性HSV-1のTK遺伝子変異(J Med Virol 58:387-393,1999)と同じであった.R98/1株とR98/3株はともにACVに対して耐性[Vero細胞を用いたプラーク減少法で測定したACVの50%ウイルス増殖抑制濃度(50%inhibitory concentration;IC_<50>)は,ともに>100μg/ml]であったが,PFAにはそれぞれ感受性(PFAのIC_<50>:20μg/ml),耐性(PFAのIC_<50>:>100μg/ml)であった.R98/3株のTK遺伝子配列を決定したところ,R98/1株のTK遺伝子変異と同じ変異が認められた.さらに両株のDNAポリメラーゼ(DNApol,UL30)遺伝子塩基配列を直接シークエンス法で決定し比較したところ,後者のDNApol遺伝子の2144番目の塩基TがGに置換し,この変異により保存領域IIに位置する715番目のアミノ酸バリン(V)がグリシン(G)に置換していた.DNApol遺伝子にはその他の変異は認められなかった.この遺伝子変異(V715G)がPFAに対する耐性を獲得させたものと考えられた.PFA耐性R98/3株はTK遺伝子における1塩基欠損とDNApol遺伝子における1塩基置換の二重変異を有していることが明らかにされた.R98/1株とR98/3株のウイルス増殖能(one step growth)は,本患者から分離されたACV感受性HSV-1 TAS株に比較して,それぞれ3分の2,3分の1に低下していた.また,HSV-1 R98/3株のTK遺伝子変異はTK欠損株であることを示し,マウスに対する神経病原性は低いと考えられた(日児誌102:402-409,1998).
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