Research Abstract |
本年度は,悪性症候群に罹患した症例を36名登録し,精神科診断,合併症,病歴,治療歴,治療反応性,悪性症候群発症時の状況など種々の情報を元にデータベースを作成した.その上で,各症例についてチトクロームP4502D6(CYP2CD6)遺伝子の変異と遺伝子型を調べた.CYP2CD6^*10変異アレルの検出には著者らが既述した方法(Kawanishi et al.,J Neurol Sci,160,102,1998)に基きPCR法とRFLPを用いた,また遺伝子の全欠損の検出にはJohanssonら(Pharmacogeret6,351,1996),Aklilluら(JPharmacol Exp Ther,278,441,1996)の方法に基づきLongPCR法を用いた.得られた結果は対照(抗精神病薬の内服を2年以上行いかつ悪性症候群に罹患したことのない精神分裂病症例)と比較し,統計的解析を行い検討した.悪性症候群症例36例のうち29例は原疾患が精神分裂病であった.悪性症候群起因薬剤のうち最も頻度が高いのはハロペリドールで,少なくとも10例で悪性症候群発症との関連が疑われた.悪性症候群罹患者では^*10変異アレルの頻度は41.7%で,ホモ接合体は25%であった.アレル,遺伝子型ともに対照と比較して有意差は認めなかった.悪性症候群の症例では全欠損の症例は認めなかった.結果の一部はPsychiatric Geneteics誌に報告した(Kawanishi et al.,Psychiatric Genet,10,145,2000).今後はさらに悪性症候群の症例数を集積し,データを蓄積した上で解析を行うとともに,症例個々において変異の有無/遺伝子型と,症状の多様性,重篤度,経過などについて詳細に検討を行う予定である.
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