2000 Fiscal Year Annual Research Report
正常および異常腎発生におけるMAPキナーゼの意義-器官培養を用いた検討-
Project/Area Number |
12770610
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
飛彈 麻里子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20276306)
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Keywords | MAPキナーゼ / 腎臓 / 発生・分化 / 器官培養 / ネフロン形成 / 尿管形成 / MEK阻害薬 / p38阻害薬 |
Research Abstract |
本研究ではmitogen-activated protein kinase(MAPキナーゼ)の腎発生における機能的意義を検討している。本年度はMAPキナーゼのうちextracellular signal-regulated kinase(ERK)、p38MAPキナーゼ(p38)に注目した。 【方法】胎生15日SDラット腎を、ERK活性化酵素MEK阻害剤PD98059(PD)300μM、またはU0126(U)10μM、p38阻害剤SB203580(SB)30μM、存在下、非存在下で4日間培養。培養終了後whole mountの腎を冷メタノールまたは2%ホルマリンで固定後、尿管芽をD.biflorus lectin(DBA)で、糸球体原基をPeanuts Agglutinin(PNA)で蛍光染色。10%ホルマリン固定パラフィン包埋切片で、HE染色、PCNA染色、TUNEL染色、Wilms tumor suppressor gene protein(WT1)免疫組織染色。 【結果】 1.腎の成長:腎面積は対照では培養開始時の3.9倍に増加。Uは対照の92%、PDは90%と有意差を認めず。SBでは70%と有意に成長が抑制。 2.尿管芽染色:分枝回数はグループ間で差を認めず。管腔の内径には有意差あり。PDは対照の45%、Uは52%と減少、一方SBは対照の152%と増大。 3.糸球体原基染色:糸球体原基数はUでは対照の48%、SBでは14%と減少。対照群の腎面積を単位面積として補正した値も、Uは対照の53%、SBでは20%とやはり有意な減少。 4.HE染色:対照とPDで明瞭な幼若糸球体を認めた。PD、SBの糸球体原基はPNA染色の結果と一致して、対照に比較し減少。 5.PCNA免疫組織染色:対照とPDで腎全体に陽性細胞がびまん性に存在。尿管芽などの上皮細胞には強く、糸球体原基には弱く発現。SBでは被膜直下には対照やPDと同様に陽性細胞を認め、髄質では対照とPDに比し減少。 6.TUNEL染色:対照では集合管壁と被膜直下に少数、PDでは被膜直下と髄質間質に陽性細胞より多く認めた。またSBではアポトーシスの増加を認め、特に通常ならネフロン形成の見られる部位に強く認めた。 7.WT1免疫組織染色:間葉細胞の分化の指標としてWT1免疫組織染色を行った。PDは対照と変化を認めなかったが、SBでは対照に比し弱く染色され、分化の遅れを認めた。 【総括】ERKとp38は腎発生初期過程で腎の成長に必要である。またERKは尿管芽の成長と糸球体形成に、p38は糸球体形成に関与することが示唆された。
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Research Products
(1 results)