2000 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内胎児発育遅延発症過程における一酸化窒素の役割に関する検討
Project/Area Number |
12770611
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷垣 伸治 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80286533)
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Keywords | 虚血・再灌流 / 子宮内胎児発育遅延 / 一酸化窒素(NO) |
Research Abstract |
【目的】子宮内胎児発育遅延(IUGR)の成因として、子宮胎盤循環障害が重要視されており、近年、子宮胎盤血流の制御に一酸化窒素(NO)が関与していることが明らとなってきている。一般に虚血・再灌流(IR)障害においては、NOがアポトーシスの誘導などを介して組織障害的に作用するか、血流維持や活性酸素の消去など組織保護的に作用するかが論じられ、相反する二つのNOの作用のいずれがIUGR発症機序に重要であるか検討が不十分である。我々は、これまでに妊娠ラット子宮胎盤循環のIRによりIUGRが誘導され、IR後の持続的な子宮血流量の減少が本モデルでのIUGR惹起の可能性を示した。そこで今回、本モデルを用いてIR障害に伴うNO産生動態を明らかにし、IUGR発症に関わるNOの役割を検討することとした。 【方法】妊娠17日目のS/Dラットでハロセン麻酔下に片側の子宮胎盤循環を30分間虚血するIRモデルを用いた。虚血前に、NO供与体であるL-arginine(100mg/kg)、もしくは生理食塩水を静注し、以下について検討を加えた。(a)妊娠21日目に帝王切開により胎仔・胎盤を娩出し、それぞれの重量を測定。IUGR発症について検討する。(b)NO産生をGriess法を用いてNOの代謝産物として生成される亜硝酸イオン(NO_2^-)、硝酸イオン(NO_3^-)の測定により推定する。 【成績】(a)生理食塩水投与群において、血流虚血側は非虚血側に比し胎仔重量で10%、胎盤重量で11%減少したが、L-arginine投与群では有意に抑制された(p<0.05)。(b)NO_2^-は、生理食塩水投与群、L-arginine投与群ともに変化が認められなかった。NO_3^-は、生理食塩水投与群において、虚血により有意に上昇を示すが、L-arginine投与群では上昇が生理食塩水投与群の約50%に抑制された(p<0.05)。 【結論】妊娠S/Dラット子宮胎盤循環IRモデルにおけるIUGR発症にNOが関与していることが示唆された。
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