2001 Fiscal Year Annual Research Report
下垂体に発現する脊髄小脳性運動失調症原因遺伝子の分子細胞学的機能の解明
Project/Area Number |
12770628
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小川 智史 理化学研究所, 神経構築技術開発チーム, 研究員 (00321737)
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Keywords | 脊髄小脳性運動失調症原因遺伝子 / Ataxin-1 / 黄体化ホルモン / LH産生細胞 / 濾胞星状細胞 / 下垂体 |
Research Abstract |
我々は、下垂体前葉ゴナドトロフ系列の細胞を用いて細胞特異的に発現する遺伝子をサブトラクションクローニング法を用いて解析した。その結果、2量体で構成されている黄体化ホルモン(LH)のα鎖とLHβ鎖の両方を合成している細胞株に多く発現している遺伝子群の中に脊髄小脳性運動失調症原因遺伝子と同一の配列をコードするcDNAが存在していることが判明した。本遺伝子は、近年トリプレットリピート病と呼ばれる3塩基リピートの遺伝子挿入による疾患遺伝子群の代表として注目を浴びているが、下垂体で発現している事に関しては本研究が初めての報告となった。この遺伝子の発現は、下垂体前葉ホルモン産生細胞株では検出されず、同じゴナドトロフ系列の細胞株、例えばα鎖のみを合成する細胞などでも観察されない。この結果を発生段階に照らし合わせると未熟なα鎖のみを合成するゴナドトロフからα鎖/LHβ鎖の両方を産生するゴナドトロフに分化する過程で本遺伝子が発現していると思われる。更に、性腺切除によって下垂体ゴナドトロフを機能亢進状態にすると下垂体における本遺伝子の発現が増加する事も判明し、本遺伝子がゴナドトロピンの産生に関係していると考えられた。そこで、更に様々な形態学的な、顕微鏡下の観察に展開し、でラット下垂体における本遺伝子の細胞分布について観察したところ、本遺伝子産物は下垂体においてはゴナドトロフに局在し、去勢によって増加するLHの発現と共に、発現量が増加することが分かった。しかしながら、LHの直接誘導の証拠には至っていない。また、下垂体においてはホルモンを産生しない濾胞星状細胞株にも僅かな発現が認められたり、各臓器に発現を調べると、多くの臓器に少なからず発現していることが示され、現在では、組織の特異性というよりはむしろ、細胞の機能維持、生存維持において重要な役割を担っていると考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Inoue K, Couch EF, Takano K, Ogawa S: "The structure and function of folliculo-stellate cells in the anterior pituitary gland"Arch Histol Cytol.. 62(3). 205-218 (1999)
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[Publications] 藤本 和, 小川智史: "細胞膜機能分子の二次元的な分布と動態の免疫電子顕微鏡的解析"第53回 日本細胞生物学会大会 講演要旨集. 31 (2000)
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[Publications] 藤本 和, 小川智史: "凍結割断レプリカ免疫電顕標識法"脳21. 5(1). 92-96 (2002)
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[Publications] 小川智史(分担): "日本組織細胞化学編 組織細胞化学1999 「酵素組織化学概論」"学際企画. 7 (1999)