2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムオキシゲナーゼ-1誘導によるラット肝移植後胆汁鬱滞の抑制に関する検討
Project/Area Number |
12770659
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
浦上 秀次郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70286491)
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Keywords | Heme Oxygenase-1 / 肝虚血再灌流障害 / ビリルビン |
Research Abstract |
Metalloporphyrinあるいはadenovirus vectorによる遺伝子導入によりHO-1誘導を術前に行った移植肝がその前処置を行わない移植肝に比較して移植後のviabilityが向上し,また急性拒絶反応も低頻度であるという結果が,先天的脂肪肝ラット肝移植および体外灌流肝モデルで最近報告された.従って,我々の研究はその機序の解明に方向転換を余儀なくされた.この点に関しては,以下の結果がラット体外灌流肝モデルで得られた.1)16時間冷保存肝再灌流において,HO-1前誘導肝では非誘導肝に比して,有意に良好な胆汁排泄が得られた.2)再灌流時にzinc protoporphyrin(ZnPP)にてHO-1を阻害すると,この効果は消失した.3)さらに再灌流時に低濃度(数μMレベル)のビリルビン(BR)を負荷することにより,ZnPPの胆汁分泌抑制効果は減弱し,HO-1誘導肝に匹敵するレベルに達した.一方,同濃度の一酸化炭素(CO)の負荷ではZnPPの効果の抑制は不可能であった.4)これら胆汁分泌の変化に合致して,肝逸脱酵素であるLDHの肝静脈への排出も低濃度BRの添加により抑制され,肝障害の軽減が示された.5)これらの変化は添加BRの濃度が高くなると,逆に肝障害を増悪させる結果となり,濃度依存性の2相性変化を示した. 以上より,HO-1前誘導の冷保存肝再灌流障害軽減のメカニズムとして,HO-1による酵素反応の副産物であるBRの生理活性が関与し,COは関与しないことが示唆された.
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