2001 Fiscal Year Annual Research Report
長時間におよぶ超低体温循環停止時における大脳高次機能障害発生機序に関する研究
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12770722
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
石橋 和幸 秋田大学, 医学部, 助手 (00291617)
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Keywords | 超低体温 / 循環停止 / アポトーシス / 大脳高次機能 |
Research Abstract |
超低体温循環停止法を用いた弓部大動脈再建手術に際し、60分以上の脳循環停止時間を必要とした症例について、術後脳障害について検討し、また手術と同様に60分〜90分の超低体温循環停止をした動物実験を行い組織学的に評価した。 臨床対象は、60分以上の超低体温循環停止法を補助手段として行った、弓部大動脈手術80例であった。病院死亡は5例(6%)であった。術後脳梗塞を4例(5%)に認めた。また、術後一過性の意識障害を6例(8%)に認めたが、この6例はCTでは特に器質的病変を認めなかった。65例(81%)においては術後脳障害を含めた合併症を認めなかった。脳梗塞と循環停止時間には因果関係を認めなかったが、一過性意識障害を認めた症例群においては、循環停止時間が86.2±16.1分と、脳障害を認めなかった症例群の74.6±10分より有為に長く認めた。また、脳梗塞を認めなかった71症例にっいて、強い不眠を16例(23%)に認め、記銘力低下を15例(21%)に、意欲低下を29例(41%)に認めた。 動物実験は、ビーグル犬12頭を用いて行った。循環停止せずに15℃の超低体温循環90分行った群をA群、循環停止60分行った群をB群、循環停止90分行った群をC群、とした。術後72時間後に灌流固定を行い全脳を摘出した。組織学的に光顕ではA、B群には、大脳および小脳に異常変化は認められなかったが、C群においては、大脳皮質のIII、V錐体細胞層および小脳プルキニエ細胞に著明な萎縮が多数認められ、これらの細胞の多数はTUNEL陽性を呈した。電顕所見では、A、B群に異常所見は認められなかったが、C群においてはアポトーシス様細胞を多数認めた。 弓部大動脈再建術において、術前に比べ記銘力の低下、意欲低下が認められた症例があり、それらは動物実験よりアポトーシスによる脳の高次機能の障害の可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)