2001 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性吸入麻酔薬が肝細胞の糖代謝と肝細胞内カルシウム動態に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
12770820
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
楠 真二 広島大学, 医学部・附属病院, 助手 (20304438)
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Keywords | 肝細胞 / 揮発性吸入麻酔薬 / 糖代謝 / 細胞内カルシウム / 培養細胞 |
Research Abstract |
ラット初代培養肝細胞を用いて,1.揮発性吸入麻酔薬(ハロタン,イソフルラン,セボフルラン)や低酸素が肝細胞の糖代謝に及ぽす影響,2.揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内カルシウム濃度に及ぽす影響について検討を行った. 1.揮発性吸入麻酔薬や低酸素が肝細胞の糖代謝に及ぽす影響 (1)揮発性吸入麻酔薬は肝細胞からの乳酸の放出を濃度依存性に増加させた. (2)揮発性吸入麻酔薬は肝細胞内のグリコーゲン量を減少させ,グルコースの放出量を増加させた. (3)低酸素暴露自体により肝細胞からの乳酸とグルコースの放出が増加するが,この現象に対する揮発性吸入麻酔薬の相加的作用は認められなかった. 2.揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内カルシウム濃度に及ぽす影響 (1)揮発性吸入麻酔薬は濃度依存性に肝細胞内カルシウム濃度を増加させた. (2)その増加はカルシウムチャネルブロッカーであるニッケルの細胞外投与により一部抑制された. (3)ニッケルは揮発性吸入麻酔薬による肝細胞のグリコーゲン分解や乳酸放出を一部抑制した. (4)カルシウムキレート剤(EGTA, BAPTA),カルシウムATPase阻害剤(thapsigargin)は揮発性吸入麻酔薬による肝細胞糖代謝の変化や肝細胞内カルシウム濃度の増加を抑制しなかった. (5)カルシウムイオノフォア(A23187)は肝細胞の糖代謝に影響を及ぽさなかった. 以上より,揮発性吸入麻酔薬は培養肝細胞におけるグリコーゲン分解と解糖を促進させ,好気的条件下でも濃度依存性に乳酸の放出を増加させるが、嫌気的条件では低酸素自体による糖代謝の変化に対して相加的作用をもたないことが明らかとなった.また,揮発性吸入麻酔薬が肝細胞のグリコーゲン分解や解糖を亢進させる機序として,細胞内カルシウムの増加が一因を担っている可能性は否定できないが,他のメカニズムが関与している可能性が高いことが示唆された.
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