2000 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインバランスよりみた脳低温療法によるニューロン保護作用機構の解明
Project/Area Number |
12770822
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松井 智浩 山口大学, 医学部, 助手 (50314828)
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Keywords | 脳低温療法 / 炎症 / 抗炎症 / IL-6 / IL-10 / 生体防御反応 / 末梢血単核球 / 末梢血単球 |
Research Abstract |
脳低温療法によるニューロン保護作用機構を解明する予備的研究として、健常人の末梢血を用いて免疫機能を調節しているサイトカインの産生量を低温培養(33℃)と常温培養(37℃)で比較し、低体温による脳保護効果と免疫(生体防御)系との関連の一端を解析した。 単球とリンパ球を主に含む末梢血単核球(PBMC)をフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激することで生体侵襲(病的)状態のモデルとして捉え24時間培養した。その結果、炎症性サイトカインであるIL-6産生量は、37℃と33℃で変化は見られなかったが、抗炎症性サイトカインであるIL-10産生量は、37℃培養と比較して33℃では有意に減少し、これらのサイトカインバランス(IL-10/IL-6比)も33℃では37℃と比較して有意に低下した。 次に、末梢血単球のみを分離し、リポポリサッカライド(LPS)で刺激し、同じ温度条件で48時間培養し、各々の変化をみた。IL-10/IL-6比が、PBMCの場合と同様に33℃培養では37℃と比較して低下していた。 以上より、37℃の培養でみられた「抗炎症性反応優位」な現象が、33℃では抑制されることが見出され、侵襲を抱えた生体を低温下に曝すことで、二次的な感染等に対する生体防御反応の不足を改善する可能性が示唆された。 また、これらの結果はニューロン障害に対する低体温の脳保護作用に抗炎症性サイトカイン産生の抑制が関与している可能性も示唆しており、今後脳損傷例等ニューロン障害の患者において、脳内で産生されたサイトカインと脳二次神経障害の関連並びに脳低温療法によるそれらの変化を検討する。具体的には、脳低温療法を施行した患者において、低体温施行前、施行中、復温中、復温後の各時期に末梢血(全身性)と内頚靜脈(脳局所性)並びに脳脊髄液(脳内)を採取し、PBMCを分離し、各種サイトカインの発現量を測定する。
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Research Products
(1 results)