2000 Fiscal Year Annual Research Report
麻酔による眠りと覚醒が心拍変動の非周期的ゆらぎに及ぼす影響の非線形的解析
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12770829
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
林 和子 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (40285276)
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Keywords | 麻酔深度 / 心拍変動 / 非線形解析 / ゆらぎ / フラクタル / 自己相関関数 / ポアンカレ / カオス |
Research Abstract |
本研究では、麻酔深度、眠りが心拍変動の非周期的、ゆらぎ成分にどのような影響をあたえるかを、心拍変動の非線形解析法により研究し、併せて脳波との関係を検討するものである。人(12名)をプロポフォールによる静脈麻酔薬、およびセボフルランによる吸入麻酔薬で麻酔し、麻酔深度に応じた心拍変動のゆらぎ成分の変化を検討してきた。 現時点で、脳波解析は、通常の脳波用皿電極を3つ前額部に装着し、脳波信号を脳波用アンプにて増幅し、カード型A/D変換器を介して512Hzでサンプリングしパーソナルコンピュータに保存すると同時に、脳波解析用ソフトにてパワースペクトラム、およびバイスペクトラムインデックスとして解析している。心拍変動は、麻酔深度を変えた各解析時点で心電図から信号を連続15分間、取り込み、Lorenzs plotsを用いた非線形的解析法と、従来のパワースペクトラムによる周波数解析法により解析を行った。Lorenzs plotsの散らばりは、長軸方向の変動(SD2)と短軸方向の変動(SD1)を解析した。麻酔深度を増すに従い、副交感神経に由来すると言われるSD1は増した。この時、同時に検討したパワースペクトラム分析では、LF/HFが低下した。この時、硫酸アトロピンを投与するとSD1は低下、LF/HF増加し、これらの深麻酔下に見られる心拍変動の特性が副交感神経由来であることが示唆された。一方、麻酔深度の減少、覚醒に従って、SD1の低下を認め、同時にLF/HFが増加した。Lorenz plotsの散らばり分布の形状は、麻酔深度が深まるにつれて、commet-shape状の分布から、cloud shape,ring shape等の形状へ変化する傾向を示した。また、プロポフォールによる麻酔下ではセボフルランに比べて、より心拍変動のゆらぎが大きい傾向が見られた。 来年度の予定として、更に、麻酔による眠りと心拍変動のカオス的な系の乱雑さ、ゆらぎを定量的に把握するため、自己相関関数、フラクタル要素解析を今後の課題として検討中である。
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