2000 Fiscal Year Annual Research Report
歯に矯正力を加えた際の圧迫側変性歯根膜組織と歯根吸収との関連
Project/Area Number |
12771267
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
入江 丈元 北海道大学, 歯学部附属病院, 助手 (90301910)
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Keywords | 歯根吸収 / 歯の移動 / 変性組織 / 破骨細胞 |
Research Abstract |
成ネコの犬歯を用いて歯を移動させる実験を行い、以下のことを検索する目的で計画を進めてきた。(1)歯の移動実験を行い歯根吸収と変性組織および血管・破骨細胞・歯槽骨の吸収の分布との関連を3次元的に解明する。(2)歯根吸収と歯槽骨吸収の相違点。(3)実験的に偏咀嚼や開咬などを生じさせた場合の歯根の形態や吸収がどのように変化していくか、咬合により差があるかを検討する。(1)および(2)に関しての本年度の研究の成果としては成ネコの上顎犬歯に過度な荷重を4週間加え、頬側方向に傾斜させた。これにより歯根は鼻腔側部の皮質骨に強く圧迫され、歯根および歯槽骨の吸収がおこりやすい状況になる。実験期間終了後、灌流固定・犬歯部の切り出し・脱灰・セロイジン包埋を行い試料とした。この試料から厚さ30μに連続薄切した後・H-E染色を施し、歯槽骨吸収および歯根吸収の生じる部位、変性組織の分布部位、歯槽骨の様相を光顕下で観察した。その結果、歯根および歯槽骨の吸収は主に根尖部の圧迫側で認められた。破骨細胞は吸収部位に面する歯根膜で血管の周囲にわずかにみられた。また圧迫を受けた鼻腔側歯槽骨部において歯根膜を介して歯根表面を覆うように多数の骨芽細胞があらわれ、新生骨の形成がおこなわれている部位が存在した。これは歯槽骨を突き破って歯根が露出しないための生体の防御機構であると考えられ、このような新生骨の形成は新しい知見であった。またこれらの成因としては歯槽骨の吸収速度と歯根の吸収速度に関連し、歯槽骨の吸収が速かった場合は骨壁の穿孔となって現れることが考えられた。さらに移動した犬歯を意図的に4週間の後戻りをさせる実験をおこなった結果、歯槽壁に生じた穿孔は4週たった後も存在していたが、歯根膜内で新たに新生骨が形成されることにより次第に小さくなる傾向を示していた。今後はこれらの切片を立体的に再構築し、3次元的に分布を見ていく予定である。
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