2001 Fiscal Year Annual Research Report
歯肉線維芽細胞が産生するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)の歯周病病因に果たす役割
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12771325
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
河野 隆幸 岡山大学, 歯学部・附属病院, 助手 (80284074)
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Keywords | 歯周病 / 1型糖尿病 / グルタミン酸脱炭酸酵素 / GAD抗体 |
Research Abstract |
グルタミン酸脱炭酸酵素(Glutamic Acid Decarboxylase, GAD)は,抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(γ-amino butyric acid, GABA)をグルタミン酸から合成する酵素で,脳や膵β細胞に高濃度に存在する。膵β細胞に存在するGADのうち分子量65kDaの蛋白に対するGAD抗体は,自己免疫疾患である1型糖尿病の発症と進行に関わる重要な自己抗体と考えられている。 申請者は,GAD65mRNAが,ヒト歯肉線維芽細胞に発現することを発見した。そして,昨年までの研究で,GAD65のmRNAの発現は,炎症性サイトカインであるIL-1刺激によって増加すること,また全身疾患を有しない歯周病患者の血清中に,GAD抗体が存在することがわかった。 本年度は,歯周組織において,Gmm65がタンパクレべルで検出出来るかどうかを,Western-blot法,および免疫染色法を用いて確認した。 その結果,歯肉線維芽細胞は,GAD65蛋白を産生すること,さらに歯周病患者の歯周組織においてもGAD65が存在することが確認できた。 この結果は,歯周病患者の歯周組織で産生されるGAD65が抗原となり,GAD抗体が産生される可能性が示唆された。歯周病などの炎症性疾患が、GAD65の産生量に影響する可能性を示唆しているものと考察される。GAD65が自己免疫的機序により歯周病の発症に関わっていると考えた。 この結果は,糖尿病を有していない歯周病患者でも、歯周組織の歯肉線維芽細胞が産生するGAD65によって,GAD65抗体が誘導される可能性を示唆するものであると考える。GAD65は,1型糖尿病の診断や治療法を決定する上で重要なマーカーであるの,歯周病を有する糖尿病患者では注意が必要である。また、歯周病および糖尿病の病態に,GAD65抗体を介する自己免疫応答が関わる可能性があると考える。
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[Publications] Kono, T., Hishimura, F., Sugimoto, H.et al.: "Human fibroblasts ubiquitously express glutamic acid decarboxylase 65(GAD 65) : Possible effects of connective tissue inflammation on GAD antibody titer"Journal of Periodontology. 72(5). 598-604 (2001)