2001 Fiscal Year Annual Research Report
フルオレセイン類の蛍光On/Off原理の解明とその蛍光プローブ創製への応用
Project/Area Number |
12771349
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浦野 泰照 東京大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (20292956)
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Keywords | フルオレセイン / 蛍光プローブ / 光誘起電子移動 / レーザーフラッシュフォトリシス / Marcus理論 / 電荷分離状態 / 過渡吸収スペクトル / 逆電子移動 |
Research Abstract |
フルオレセインは生細胞蛍光プロープの母核として有用であり、筆者らはこれまでにNO検出蛍光試薬DAF類、^1O_2検出蛍光試薬DPAX類などの開発に成功してきた。しかしながらこれまで、フルオレセイン類の蛍光特性がどのような機構により制御されているかについては、十分な知見は得られていなかった。筆者は前年度までに、フルオレセイン誘導体である上記蛍光プローブの消光機構が、ベンゼン環部位からキサンテン環(X)部位への光誘起電子移動(PET)であると考えられることを報告した。本年度は、より直接的なPETの証拠を得るべく、蛍光量子収率の低い誘導体の蛍光団を励起した結果生じるラジカル種の、レーザーフラッシュフォトリシスによる検出を試みた。ベンゼン環部位が9, 10-Diphenylanthracene(DPA)誘導体であり、蛍光の微弱な誘導体であるDPAX-Mに475nmの励起光を照射すると、明確な過渡吸収スペクトルが観測された。含まれる分子種を詳細に解析した結果、DPA^<.+>、X^<.->が同時に生成していることが確認され、PETによりフルオレセイン誘導体の蛍光特性をコントロール可能であることを、初めて実験的に証明することに成功した。さらに、生成したラジカルイオンペアの寿命がdyad系としては非常に長いことが見出されたため、電子移動(ET)速度に関する基本的な理論であるMarcus理論に則った解析を行った。その結果、蛍光消光に関係するforward ETだけでなく、生成した電荷分離状態(CS)からの基底状態へのback ETもMarcus双曲線上にきれいに乗り、非常に長いCSの寿命はETの逆転領域に深く入り込んでいるためであることが初めて見出された。以上筆者は本奨励研究において、代表的な長波長蛍光分子であるフルオレセイン誘導体においてもPETによる蛍光のコントロールが可能であり、またそのET特性が極めて特徴的であることを見出した。本知見は、理想的な蛍光プローブとは何かとの問いに明確な指針を与えるものであり、筆者はそのようなプローブを論理的にデザインする手法を初めて確立することに成功した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] kumi Tanaka: "Rational Design of Fluorescein-based Fluorescence Probes. -Mechanism-based Design of a Maximum Fluorescence Probe Singlet Oxygen-"J. Am. Dhem. Soc.. 123. 2530-2536 (2001)
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[Publications] Mitsuo Wada: "Synthesis and Optical Properties of a New Class of Pyrromethene-BF2 complex Fused with Rigid Bicycle Rings and Benzo Derivatives"Tetrahedron Lett.. 42. 6711-6713 (2001)
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[Publications] Noriyuki Suzuki: "Orthogonality of Calcium Concentration and Ability of 4, 5-Diaminofluorescein (DAF-2) to Detect NO"J. Biol. Chem.. 277. 47-49 (2002)
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[Publications] 浦野 泰照: "高感度一重項酸素蛍光プローブの開発"医学のあゆみ、別冊 "酸化ストレス". 131-134 (2001)