2000 Fiscal Year Annual Research Report
モデルペプチドを用いたアポリポタンパク質脂質膜結合機構に関する研究
Project/Area Number |
12771387
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
斎藤 博幸 国立医薬品食品衛生研究所, 大阪支所・薬品試験部, 研究員 (60300919)
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Keywords | アポリポタンパク質A-I / ペプチド / NMR / エマルション / リボソーム / 励起エネルギー移動 |
Research Abstract |
善玉コレステロールとして知られるHDLの主要タンパク質であるアポリポタンパク質A-I(アポA-I)及びそのモデルペプチドの脂質膜結合機構を、主に蛍光法及びNMRにより検討した。アポA-IはHDL様の非常に小さなリポソーム、あるいはカイロミクロン様のエマルションに結合性が高く、それらの結合には表面膜リン脂質の極性部位の構造が重要であることが蛍光プローブを用いた蛍光異方性及び重水同位体効果の測定から示唆された。そこで、アポA-I及びそのモデルペプチドの脂質膜結合部位の原子レベルでの同定を、高分解能1H-、13C-NMRを測定することにより行った。その結果、アポA-Iのα-ヘリックスは、リン脂質グリセロール骨格部分からカルボニル炭素及び隣接するアルキル鎖のα、β-メチレン基付近にかけての界面部位に強く結合し、疎水部深くには結合していないことが示された。この、比較的"浅い"アポA-Iα-ヘリックスの脂質膜結合様式は、ペプチドのトリプトファン残基と蛍光消光剤間の励起エネルギー移動を利用した蛍光測定の結果からも支持された。さらに、コレステロールや中性脂質によるアポA-Iの脂質膜結合性の変化の原因を13C-NMRによる脂質膜構造の詳細な比較から検討したところ、リン脂質カルボニル炭素の化学シフト値がアポA-Iの最大結合量と非常によく相関することを見出し、リン脂質カルボニル炭素付近の水和状態(構造性)、すなわち脂質-タンパク質問相互作用に供される脂質膜界面部位のスペースによってアポA-Iの結合性が制御されていることを初めて明らかにした。
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[Publications] Hiroyuki Saito: "Inhibition of Lipoprotein Lipase Activity by Sphingomyelin : Role of Membrane Surface Structure."Biochimica et Biophysica Acta. 1486(2-3). 312-320 (2000)
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[Publications] 斎藤博幸: "生体エマルション"血漿リポタンパク質"の構造とその生理的機能"表面. 38. 288-296 (2000)
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[Publications] 斎藤博幸: "生体エマルション"油化学. 49. 1157-1162 (2000)
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[Publications] Hiroyuki Saito: "Modulation of Apolipoprotein E-Mediated Plasma Clearance and Cell Uptake of Emulsion Particles by Cholesteryl Ester"Lipids. (in press). (2001)